ユライ・ヴァルチュハ ©読響2019年の公演写真 ©飯田耕治ユライ・ヴァルチュハ(指揮) 読売日本交響楽団メタモルフォーゼン&エロイカ――終戦80年に寄せる祈り第280回 土曜マチネーシリーズ 8/23(土)第280回 日曜マチネーシリーズ 8/24(日)各日14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp59チームアップ!オペラ & 東京文化会館オペラBOX 《泣いた赤おに》子どもも、大人も。世代を超え心に響く日本語オペラの傑作文:岸 純信(オペラ研究家)文:山田治生 2024年から読売日本交響楽団首席客演指揮者を務めるユライ・ヴァルチュハが第二次世界大戦終戦80年となる今年8月の読響マチネーシリーズに登場し、R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」とベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を取り上げる。 1944年8月に新作の依頼を受け、シュトラウスは「メタモルフォーゼン」の作曲を始めたが、45年2月に彼のオペラを多数初演したゼンパーオーパーが連合軍のドレスデン空襲によって瓦礫の山となり、同年3月にはウィーン国立歌劇場も空爆を受けて破壊された。そんな状況のなかで4月に作品を完成させる。いうまでもなく「メタモルフォーゼン」には破壊された祖国への悲しみが込められている。「23の独奏弦楽器のための習作」という副題が付されているこの作品では、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」第2楽章の葬送行進曲の旋律から派生した主 童話とは、「大人になった時に思い出す」ものなのだろうか。西洋の名作『シンデレラ』や日本の『笠地蔵』にしても、物語の味わいはもちろん子どもであっても理解できるわけだが、大人になり、齢を重ねれば重ねるほど、「話の真実味」にいっそう深く気づくことができるよう。「これは御伽噺ですよ…」と優しく語られる中で、人の残酷な一面や、「他人を慈しむ心」の在り方が、最初に接したときから何十年も経ったいま、より鋭く鮮やかに心に響くのではないかと感じている。 この9月に立川と上野で上演される日本語オペラ《泣いた赤おに》も、そのような「いま改めて噛み締めたい童話」に基づく傑作である。作曲者・松井和彦のメロディアスな音運びと、日本語の聴かせ方の上手さで人気を誇り、各地で上演が続くヒット作でもあるが、一時間ほどの小品オペラながら、「親しい人を大切に思う心」が実に麗しく描かれる。「人の心を優しくさせるステー題が奏でられる。 この日の演奏会の後半は、その「英雄」。第2楽章の葬送行進曲はこれまでも様々な場面で追悼の意味を込めて演奏されてきたが、今回は、シュトラウスの「メタモルフォーゼン」ともども、終戦80年に際し、その犠牲者に捧げられるものとなるであろう。昨年5月の首席客演指揮者就任を記念するマーラーの交響曲第3番で感動的な名演を披露したヴァルチュハ&読響のコンビだけに、今回も心を揺さぶられる演奏が繰り広げられるに違いない。ジ」として、親子連れだけでなく、大人にもぜひ観てほしい一作である。 なお、上演回数が多い演目だけに、名だたる歌手たちがこのオペラに参加してきたが、今回、筆者が特に注目するのは、赤おにと青おにのキャスティン9/15(月・祝)15:00 たましんRISURUホール9/21(日)15:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp※関連ワークショップあり。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。グ。底抜けの明るさを持つテノール・宮里直樹(赤おに)が、陰影に富む歌を聴かせるバリトン・黒田祐貴(青おに)の自己犠牲に気付いた瞬間、いったいどんな一声を放つのか。その一瞬に多くの人が揺さぶられたならばと願う。
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