アリーナ・イブラギモヴァ ©Joss Mckinley大野和士 ©Rikimaru Hotta左より:ラデク・バボラーク ©Lucie Cermakova/ビクトール・テオドシエフ/過去の公演より ©大窪道治大野和士(指揮) 東京都交響楽団ショスタコーヴィチ晩年の深遠に迫るホルンの室内楽IV バボラーク・アンサンブルブルガリアの新星と巨匠の友情が生む黄金の響き第1025回 定期演奏会Aシリーズ 9/3(水)19:00 東京文化会館第1026回 定期演奏会Bシリーズ 9/4(木)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp11/22(土) 14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net56文:鈴木淳史文:宮本 明 没後50年のアニバーサリーを迎えたショスタコーヴィチ。9月の都響による定期演奏会は、この作曲家のファンならずとも聴いておきたいプログラムだ。音楽監督・大野和士自ら指揮して、作曲家にとって生涯のなかで最後となった協奏曲と交響曲の2作品を取り上げる。ショスタコーヴィチがその晩年にたどり着いた境地を味わい尽くす演奏会だ。 ヴァイオリン協奏曲第2番は、ドラマティックな第1番に比べると、演奏会で取り上げられる機会は多いとはいえないものの、円熟した筆致で、内面を深く掘り下げた作品だ。今回は、民族的なパッションをヴィルトゥオーゾ性へと高めるヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァがソリストとして登場。最初の独奏フレーズから、その魔力的な歌い回しに引き込まれてしまうこと間違いない。各楽章に設けられたカデンツァを含め、作曲家の内面をじつに生々しく描いてくれるだろう。 25歳以下1,500円という激安設定あり! 若いってうらやましすぎる。 11月、スーパー・ホルン奏者ラデク・バボラークが、お気に入りの第一生命ホールに戻ってくる。ホルン専攻の学生はもちろん、小中高の吹奏楽少年少女にとってもあこがれの「バボちゃん」。日本との絆は強く、今年も2月のN響定期でパーフェクトなR.シュトラウスの協奏曲第1番を聴かせてくれたし(圧巻のカデンツァ!)、ちょうど本誌の発行日前後にはわれらが福川伸陽が提唱した「ワールド・ホルン・サミット」でホルン世界選抜とともに来日している真っ最中のはず。 秋の来日はバボラーク・アンサンブルとの室内楽。始まりは20年以上前のプラハ音楽院時代の弦の同級生たちとのユニットで(チェロのハナ・バボラコヴァはバボラーク夫人)、後に参加した若いメンバーも「弦の国」チェコゆかりの奏者たち。プラハを拠点にする そして、自作や他作の引用やほのめかしを多数含み、室内楽的なエッセンス、打楽器の効果的な使用など特徴の多い交響曲第15番。これまでの人生を振り返りつつ、ミステリアスな要素も目立つ最晩年の作品である。日本人ヴァイオリニスト髙橋紘子も加わった。 バボラーク自身が見いだした、ブルガリア出身のホルンの新星ビクトール・テオドシエフ(19歳)の登場にも注目が集まる。天才が嗅ぎ当てた天才少年に出会う、わくわくの瞬間。ベートー 折にふれてショスタコーヴィチ作品を取り上げてきた大野和士。今回も、彼ならではのケレン味のない誠実な音作りによって、作曲家の心情が聴き手の心にストレートに伝わってくる演奏が期待できそうだ。ヴェンの「六重奏曲 op.81b」などホルン2本+弦楽四重奏の編成の3曲で、バボラークと堂々渡り合う。 「同じ魂を持った仲間と音楽をシェアできる室内楽は夢の仕事」というバボラーク。世界最高峰のホルンの魅力に、その室内楽スピリットが宿る。
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