第733回 定期演奏会 8/23(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp他公演8/24(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール(025-224-5521)谷 昂登 ©井村重人アダム・ヒコックス左:スーアン・チャイ 右:佐藤俊介 ©Marco Borggreveアダム・ヒコックス(指揮) 東京交響楽団欧州での活躍著しい英国の新鋭が初来日!佐藤俊介(ヴァイオリン) & スーアン・チャイ(フォルテピアノ)ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全曲独自の解釈で浮かび上がる楽聖の知られざる魅力50文:江藤光紀文:片桐卓也10/9(木)19:00、10/10(金)14:00 19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/※公演によりプログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 今や指揮者界は新たな才能が次々に登場する激戦区だが、8月の東京交響楽団定期に登場するアダム・ヒコックスは近年急速に注目を集める20代の最有望株の一人。来日公演で快演を聴かせてくれたばかりのシャニ&ロッテルダム・フィルのアシスタントを2019年から22年まで務めた後、23年から英グラインドボーン・シンフォニアの首席指揮者に抜擢され、さらに来シーズンからはノルウェーのトロンハイム響の首席指揮者にも就任する。ヨーロッパ各地のオケからの客演依頼も殺到しているが、イギリスの大指揮者リチャード・ヒコックスを父に持つサラブレッドと聞けば、そのリードにも持って生まれた何かがあるに違いないと推測したくなる。 今回の来日はアジア・デビューだそうだが、その大事なコンサートに選んだ勝負曲は今年没後50年となるショスタコーヴィチの交響曲第10番。50分近くを要し、政治からの圧力にさらされ続け コンチェルト・ケルン、オランダ・バッハ協会などヨーロッパの第一線で活躍してきたヴァイオリニストの佐藤俊介と、フォルテピアノ奏者として数々の優れた録音をリリースしているスーアン・チャイが、この10月にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を浜離宮朝日ホールで開催する。しかも、2日間、全3回の公演で、ヴァイオリニストにとって最も重要な作品と言えるこれらの傑作を弾き切るという。 実はこの全曲演奏会には伏線がいくつかあった。まず、ふたりが最初に出会った時にベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」を演奏して、意気投合したこと。その後、共演を重ねる中で、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ10曲を一気に演奏する機会を2度も持ったこと。さらには全曲の録音を通して、より一層この傑作群の理解を深めたこと、である。 今回の10曲のラインナップを見て気たこの作曲家の苦悩がストレートに感じられる大作だ。カラヤンが唯一録音したこの思弁的なドラマを、若き才能がどう読み解いて提示してくれるのだろうか。 前半のラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の独奏を務めるのは谷昂登。桐朋学園を経て、現在はケルンで学んでいる。2021年の日本音コン1位をはじめ、各種のコンクールに上位入賞している逸材だ。オケの分厚いサウンドに若いエネルギーでぶつかっていくことだろう。づいた方もいると思うが、「クロイツェル」は通常の表記とは違い、「クロイツェル/ブリッジタワー」とされている。そもそもこの作品はベートーヴェンが出会ったばかりの名ヴァイオリニスト・ブリッジタワーの才能に惚れ込み、彼のために書いたという経緯があった。それを尊重して、この表記を使うことにしたという。ガット弦を張ったヴァイオリン、そして1830年製のローゼンベルガーによる響きがホールに満ちて、ベートーヴェンの知られざる一面を教えてくれるに違いない。 冒頭には神秘的な美しさを湛えたリャードフの「魔法にかけられた湖」。次世代のホープが放つ渾身のロシア・プロに注目だ。
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