セミヨン・ビシュコフ ©Petra Hajská鈴木秀美 ©K.Miura小倉貴久子セミヨン・ビシュコフ(指揮) チェコ・フィルハーモニー管弦楽団今こそ聴きたい名門オーケストラの慈愛に満ちた響き高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Mastersシリーズ vol.10鈴木秀美 チェロ・リサイタルガット弦とフォルテピアノで聴くベートーヴェンの傑作群4310/22(水)、10/23(木)各日19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp他公演 10/19(日) 大阪/ザ・シンフォニーホール(06-6453-2333) 10/20(月) NHKホール(ハローダイヤル050-5541-8600)10/21(火) 文京シビックホール(03-5803-1111)10/25(土) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール(04-2998-7777)※公演により出演者、プログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。文:宮本 明文:矢澤孝樹 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団が来日する。2018年から首席指揮者を務めるセミヨン・ビシュコフとは19年、23年に続いて3度目。まずはショスタコーヴィチの交響曲第8番(10/22サントリーホール)が目をひく。 ソ連の抑圧の記憶が刻まれたチェコのオーケストラと、亡命したロシア人指揮者による演奏。しかし共産党体制が崩壊した1989年以降、逆にチェコ・フィルはより積極的にこの作曲家に取り組んでいるように見える。そもそも彼らのあたたかく優しい触感の弦と輝かしい金管はショスタコーヴィチによく似合うサウンド。ショスタコ・エキスパートでもあるビシュコフの陰影深い表現とともに、政治的な背景を離れて、純粋に音楽作品としてショスタコーヴィチを提示してくれるはずだ。 10月20日のNHKホールでは「わが祖国」全曲も。チェコの魂の音楽。彼らのこの曲の新録音はBBCミュージック 高崎芸術劇場で大友直人芸術監督がプロデュースする「T-Masters」シリーズのvol.10は、ガット弦チェロの鈴木秀美とフォルテピアノの小倉貴久子の共演。「Masters(大家たち)」という複数形の名にふさわしく、大家二人の登場だ。 そして二人がいずれも「開拓者」としての歳月を経てここに至ることも感慨深い。鈴木秀美は半世紀前から、歴史的アプローチでの演奏を実践してきた。ガット弦、反りの少ない弓、エンドピンなしなど楽器のセッティングはもちろん、楽譜を読み直し「伝統」の埃を取り払う―それが単なる復古主義ではなく、作曲家の本来の意図を蘇らせ、楽曲が新たな生命を持つためであることは、その雄弁にして繊細な演奏が示している。近年は指揮者としても大活躍だ。 同じことは小倉貴久子にも言えるだろう。1993年、95年ブルージュ古楽コンクールでの鮮烈な1位受賞以来、初期フォルテピアノから19世紀末の誌やグラモフォン誌で表彰されるなど高評価を獲得。恒例のプラハの春音楽祭の開幕「わが祖国」も、今年初めてこのコンビが担当して注目を集めた。さらに、チャイコフスキーの交響曲第5番がメインのプログラムも(10/23)。交響曲全曲を含む「チャイコフスキー・プロジェクト」の録音(2015~19年)も、彼らの大きな成果のひとつ。2028年での退任を公表しているビシュコフ。快調なコンビの現時点での集大成を堪能できるプログラムを携えての来日公演はうれしい。エラールに至るまで、歴史的鍵盤楽器がそれぞれの時代の「正解」であったことを生命力あふれる演奏で証明してきた。今回小倉は晩年のベートーヴェンもその楽器を愛用したピアノ・メーカー、ブロードウッドが1800年頃製作した楽器(太田垣至修復)を使用。9/18(木)15:00 高崎芸術劇場 音楽ホール 問 高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900 https://takasaki-foundation.or.jp/theatre/ 二人が共演し始めたのは比較的近年だが、必然の出会いというべき説得力とスリルを備えた二重奏を展開する。今回の曲目はベートーヴェン壮年期のチェロ・ソナタ第3番、そして後期の深遠な世界への入口に立つ第4番、第5番。まさに「Masterpieces」3曲での共演だ。
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