eぶらあぼ 2025.8月号
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終演後に指導する山田和樹マエストロ ©Junichiro Matsuo左より:増田桃子さん、田邊紗菜さん、泉和奏さん、笠原優花さん総勢219人の幕張総合高校シンフォニックオーケストラ部41前に出ていくのですが、すごく注目され、緊張もありましたが嬉しかったです。演奏はオーケストラが私たちをリードしてくれている感じがあって、とても吹きやすかったです」 東京オペラシティの本番では、終盤のリタルダンドでオーケストラとわずかにテンポがずれるところもあった。すると、終演後にマエストロ自ら高校生たちにレクチャーをしてくれた。これもまたなかなかできない貴重な経験だった。 バーミンガム市響との共演が成長につながった部員もいた。トランペット担当の田邊紗菜だ。中学時代もオーケストラ部で、《祝典序曲》を演奏したことがあった紗菜だが、高校では演奏面で自分自身の課題を感じていた。「どの本番でも緊張してしまい、ついまわりのメンバーの音に隠れるように吹いてしまうんです。でも、今回は自分の意志を持ち、素晴らしい2つのホールに自分の音を届けよう、絶対に隠れないで吹こうと思って臨みました」 そんな紗菜や部員たちを、バーミンガム市響がやさしく受け入れ、音で寄り添ってくれた。「本番で一緒に演奏しながら感じたのは、バーミンガム市交響楽団の方たちは心が先にあって、音楽が♪♪♪それに導かれているということでした。それに、楽団員が演奏中に言葉を使わないコミュニケーションをしているのもわかりました。その良い雰囲気に私たちもついていくことができましたし、私自身も誰かに隠れずに吹ききって、殻を破れたような気がします」 終演後にはバーミンガム市響のメンバーとの交流もあった。紗菜が緊張していても楽しく演奏する方法を質問すると、「そもそも隠れられない楽器だから、怖がらないでミスをするときは派手にする」といった回答をもらった。それもまた紗菜の力になった。 バンダで出演した仲間たちを客席で見守っていた部員もいた。サックス担当の泉和奏はプロオーケストラの生の演奏を聴くのが初めてだった。「チューニングだけでも天から降ってくるような音でした。《祝典序曲》は1音目から感動で涙が止まらなくなり、10人がバンダで出てきてからはもうボロボロでした」 ヴァイオリン担当の笠原優花はやはり自分と同じ弦楽器に目を奪われた。「バーミンガム市響は明るくてエネルギッシュ。弦楽器が楽しそうに演奏する姿を見て、『私もあんなふうに弾けたらいいな』と思いました。バンダは、いつも一緒に活動している同期がすごい場所で演奏しているのが嬉しくて、私も泣きました」 幕総オケ部はこの先、3年連続の全国大会金賞を目指してコンクールに挑んでいく。きっと今年の演奏には、バーミンガム市響が教えてくれた音楽の楽しさや感動が息づいていることだろう。♪♪♪拡大版はぶらあぼONLINEで!→

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