それでも踊るそれでも踊る者たちのために者たちのために 今月は大きなお知らせが2つある。 1つ目は本連載が、いよいよまとめて単行本化されることだ。いま絶賛その作業中である。追加原稿の他、電子出版ならではの映像リンクなども豊富に入れ込んでいる。本連載の第一回目が2014年7月号からなので、メタメタな経済状況のなかで頑張るアーティストたちや、世界中を巻き込んだコロナ禍、にもかかわらずなんとか海外へ行く話や、その後すっかり変わってしまった社会の様子などがリアルタイムで書かれており貴重なアーカイブになっている。表紙もこれまた良い感じなので、ぜひ楽しみに待ってほしい。 そしてもうひとつは「舞踊評論家【養成→派遣】プログラム」の第三期生の募集である。オレの30年以上にわたる舞踊評論家としての蓄積と生きた情報と人脈の、すべてを次の世代へ引き継いでもらうため本気で育てるプログラム。最終的にヨーロッパのダンスフェスへの派遣を行うものである。特に今回は試験的に「聴講生」も募集する。というのも応募に必要な課題公演(アクラム・カーン『ジャングル・ブック』)は、「舞踊評論を書く者ならば、ぜったいに見逃すことのできない公演」であるとはいえ、上演地は埼玉と愛知のみであり、本州以外の居住者からはちょっと遠い。「その近辺に住んでないと受けられないのか」「聴講だけでもしたい」という声は以前から寄せられていたのである。全国的にダンスについて書く人が増えるのは、ダンスにとって絶対にいいことだ。そのための努力は続けていきたい。 で、この評論家養成プログラムが海外でも話題に118なっていることは本連載でも述べてきた。昨年12月に「香港ダンスエクスチェンジ・フェスティバル」に招かれたが、このときのレクチャーが好評で、それを見ていた韓国のフェスから依頼があったのだ。韓国第3の都市、大邱(テグ)で開催されているNDA(New Dance for Asia International Festival)である。まあオレはこのフェスの公式アドバイザーだが、あくまでも芸術監督の側からのオファーなんで。現地の劇場と組んだプログラムに、教育に力を入れているものがあるのだそう。 さて7月といえば、見逃せないのがパリ・オペラ座バレエ団公演。オレがこの10年間言い続けてきた「日本でフルサイズ作品の公演をしてほしい振付家4人」最後の一人、アレクサンダー・エクマンの本公演『PLAY』があるからだ(他の3人は、ヨアン・ブルジョワ、クリスタル・パイト、マルコ・ゲッケ)。経済的な事情もありコンテンポラリー・ダンスが一時期、中規模の作品ばかりになってしまったが、その後の世代が大きな作品を創り出している(創れるサポート体制が充実してきたからだが)。エクマンは度肝を抜く演出、スケールの大きさ、どれもが観るべき振付家である。ちなみに11月に来日するNDT 2でもエクマン作品がある。そちらも見逃せない。Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。「ダンス私塾オンライン」開設。皆様の参加をお待ちしております!第130回 「単行本と養成プログラムとアレクサンダー」乗越たかお
元のページ ../index.html#121