ブルックナー:交響曲第9番 WAB109/カーチュン・ウォン&ハレ管高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Shotシリーズvol.15 小井土文哉 IN CONCERTうたはどこでおぼえた 岡原真弓リサイタル 私の好きな歌2 ―林光ソング―バッハとその息子たちによるフルート・ソナタ集/柴田俊幸&アンソニー・ロマニウクSACD+DVD116CDCDCD上昇株のカーチュン・ウォンは2024年9月の日本フィル定期で、3楽章版のブルックナーの交響曲第9番を演奏し、その1ヵ月後、同じく首席指揮者を務める英国のハレ管の公演で、ジョン・A・フィリップスがSPCM版を新たに改訂した第4楽章付きの「2021-22年SPCM版」を披露した。本作は後者のライブ録音である。第1~3楽章は実際聴いた前者以上に緻密で恰幅の良い好演。第4楽章も前3楽章のトーンが維持されており、24年6月のインバル/都響による日本初演時よりも違和感を感じさせない。完成版の是非はともあれ、興趣旺盛な録音であるのは確か。 (柴田克彦)小井土文哉はイタリア・イモラ音楽院の名教師ボリス・ペトルシャンスキーのもとで研鑽を積みつつ国内外で活躍を続けるピアニスト。本盤は、作品の構造、内容を丁寧に聴き手へと届ける演奏で魅了してきた彼の持ち味が発揮されたものとなっている。とりわけ注目なのがスクリャービンのソナタ第3番。この作曲家は小井土にとっては重要なレパートリーである。音色の多彩さとスケールの大きさ、楽曲への理解度と演奏時の集中力の高さによって、作品に散りばめられた様々な仕掛けを鮮やかに浮かび上がらせている。シューマンでの物語性を感じる演奏も魅力的だ。 (長井進之介)新たな日本語オペラの創造と普及に努めるオペラシアターこんにゃく座に、“歌役者”として長年にわたり在籍する岡原真弓。そのライブアルバム第2弾は、劇団の中心的存在であった林光のソングを集めたリサイタルを収録。“母のお腹の中で聴いていた”という〈たたかいの中に〉をはじめ、切っても切れない縁で結ばれた林のうたの数々を、自らの血肉と化し、ごく自然体でその世界観を引き出してゆく岡原。余すことなく収められた楽曲間のトークによって、それぞれの作品にのせられた想いが一層の立体感をもって浮かび上がってくる。 (編集部)柴田俊幸とアンソニー・ロマニウク。この2人のディスクというだけで心が躍る。共演の度に、バロックから現代まで縦横に行き来する2人の発想と即興力に「古楽とはかくも自由になれるのか」と驚かされるからだ。果たして本盤もバッハ親子の作品集でありながら、内容は一筋縄も二筋縄もいかない。柴田の即興で始まる冒頭に度肝を抜かれるし、ロマニウクはチェンバロとフォルテピアノ双方を駆使し当意即妙の相方となる。楽章後半が欠落したBWV1032の第1楽章のロマニウク補筆、ロマニウク作の前奏曲、「シチリアーノ」はなんとケンプ編曲版等々、最後まで仕掛け満載!自由な精神が時空を超える。(矢澤孝樹)カーチュン・ウォン(指揮)ハレ管弦楽団小井土文哉(ピアノ)C.P.E.バッハ:フルートと通奏低音のためのソナタ「ハンブルガー・ソナタ」/J.S.バッハ:フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ BWV1031より「シチリアーノ」(ヴィルヘルム・ケンプ編)、フルートと通奏低音のためのソナタ BWV1032/アンソニー・ロマニウク:前奏曲 他柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ)アンソニー・ロマニウク(チェンバロ/フォルテピアノ)Channel Classics/ナクソス・ジャパンNYCX-10540 ¥3300(税込)ブルックナー:交響曲第9番(2021-22年SPCM版 第4楽章付き)収録:2024年10月、マンチェスター(ライブ)HALLÉ/東京エムプラスCDHLD 7566JP(2枚組) ¥オープン価格フランク(バウアー編):前奏曲 フーガと変奏曲/フォーレ:ノクターン第6番/スクリャービン:ピアノ・ソナタ第3番/シューマン:ピアノ・ソナタ第1番 他オクタヴィア・レコードOVCX-00103 ¥3630(税込)林光:流れる水と岩の歌、たたかいの中に、二人が別れるとき、マリー・アブラハムのバラード(寺嶋陸也編)、歌劇団遊行旅(萩京子編)/萩京子:わたしの好きな歌 他岡原真弓(うた/アコーディオン)五味貴秋(ピアノ) 橋爪恵一(クラリネット) 山田百子(ヴァイオリン)収録:2024年11月、渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール(ライブ)コジマ録音ALM-7314,7315(2枚組) ¥3740(税込)
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