ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番 他/シェク・カネー=メイソンヘンデル:チェンバロ組曲〜調子の良い鍛冶屋〜/中野振一郎インフルエンス/マリアム・バタシヴィリロドリーゴ:4つの愛のマドリガル/平松英子&安保こづゑCDCDCDCD112まず選曲がいい。お互いを尊敬していたショスタコーヴィチとブリテンに、ロストロポーヴィチとの関係も浮かぶ、20世紀チェロ作品集。そして自ら設定したコンセプトに全く捉われない演奏。「カッコいい!」と思った曲を、ひたすらにカッコよく弾く。特に難渋とされるショスタコーヴィチの第2協奏曲をそう感じてそう弾けるのは驚異的で、感動すら覚える。チェロ自体も深く重く鳴らすべき楽器ではなく、奏者のテンションを表現するための道具として完全に機能している。“ソヴィエト”“冷戦”“ロストロ”等の縛りから真に解放されたショスタコーヴィチがついに実現した。(林 昌英)世界的奏者によるヘンデルのチェンバロ作品アルバム。とはいえ、有名な「調子の良い鍛冶屋」をその原曲(シャコンヌ)と比較することや、ハルヴォルセン編曲の弦楽二重奏版で名高い「パッサカリア」の原曲に触れることができるし、定番アリア〈涙の流れるままに〉のチェンバロ編曲版も味わえるなど、お馴染みのヘンデル節を満喫できる、「ベスト・オブ・ヘンデルズ・チェンバロ」(宣伝文より)的内容となっている。生演奏以上にこの楽器の魅力が明瞭にわかる好録音と相まって、チェンバロ音楽&ヘンデル音楽の妙味を、興味深くかつ親しみやすく楽しめる1枚。 (柴田克彦)マリアム・バタシヴィリはフランツ・リストの名を冠する2つのピアノコンクールで優勝したピアニスト。本盤では彼女が最も得意とするこの作曲家の「ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲」に至るソナタの歴史をたどるものとなっている。ともに収められたのはハイドンにモーツァルト、ベートーヴェンのソナタ。なかでも各人の個性が発揮された作品が選ばれており、バタシヴィリはそれぞれの特徴を音色とフレージングを丁寧に変化させながら抽出し、作曲家同士の影響とソナタという形式の進化を鮮やかに聴き手へと届けてくれる。 (長井進之介)平松英子のデビュー盤の復刻。ロドリーゴ「4つの愛のマドリガル」は、16世紀スペインの古謡集の愛の歌を集めて、現代的に仕立て上げたもの。洗い流せない苦悩、きれいな髪の女への想い、ポプラ林での逢引など、平松は情感たっぷりに歌う。ウォルトン「3つの歌」は、英国風、スペイン風、アメリカ風とスタイルを歌い分けながらの表現が面白い。三善晃「4つの秋の歌」では、安保こづゑのピアノ伴奏がきれい。がらんとした駅のホーム、麦わら帽、ふと感じる秋の気配、ドングリなどが季節の変わり目を伝える。林光「4つの夕暮の歌」と中田喜直「マチネ・ポエティック~」も味わい深い歌で、しっとり聴かせる。(横原千史)シェク・カネー=メイソン(チェロ)ジョン・ウィルソン(指揮)シンフォニア・オブ・ロンドンイサタ・カネー=メイソン(ピアノ)中野振一郎(チェンバロ)マリアム・バタシヴィリ(ピアノ)平松英子(ソプラノ)安保こづゑ(ピアノ)ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番、チェロ・ソナタ/ブリテン:チェロ・ソナタユニバーサル ミュージックUCCD-45036 ¥3300(税込)ヘンデル:シャコンヌ HWV430、組曲第5番、同第7番、同第4番(第2巻)、歌劇《リナルド》より序曲、アリア〈涙の流れるままに〉、アリア〈今やトランペットが〉マイスター・ミュージックMH-4543 ¥3520(税込)ハイドン:鍵盤楽器のためのソナタ Hob.XVI:37/モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18番「狩」/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」/リスト:巡礼の年 第2年「イタリア」より第7番〈ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲〉ワーナーミュージック・ジャパン2173.253517 ¥オープン価格三善晃:4つの秋の歌/林光:4つの夕暮の歌/ウォルトン:3つの歌/ロドリーゴ:4つの愛のマドリガル/中田喜直:“マチネ・ポエティック”による4つの歌曲、霧と話したナミ・レコードWWCC-8035 ¥3300(税込)
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