eぶらあぼ 2025.8月号
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鈴木愛美 ピアノ・リサイタルベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」&ピアノと管楽のための五重奏曲/エリザーベト・レオンスカヤThoughts 戸島美喜夫×山本亜美×野村誠Résonance/髙島拓哉&望月晶CDCDSACDCD110第12回浜松国際ピアノコンクールで優勝した鈴木愛美のデビュー録音。4曲はいずれもコンクールで弾いた作品だが、曲目に目を奪われる。J.S.バッハの「平均律」、シマノフスキ「メトープ」、ハイドンの初期ソナタにシューベルトの「幻想」ソナタ。知名度よりも、確信を持って臨める曲を録音する信念の証だ。演奏はそれを裏付ける。各声部がよく語り歌うバッハ、精密なアナリーゼで曲に生命を吹き込むシマノフスキ。即興的装飾も交えたギャラントなハイドンに、内面へと沈潜しつつ若々しい推進力もあるシューベルト。4曲の性格が描き分けられつつ、まぎれもない奏者自身の「声」が一貫して響いている。(矢澤孝樹)再生したとたん流れ出す南国のごとき爽やかで美しいサウンドに、一瞬で心を奪われてしまった。本アルバムは民謡などを素材に創作した戸島美喜夫、そして戸島の影響を受けた野村誠という二人の作曲家との出会いによって生まれた。民衆の中で受け継がれてきた音楽を、ユニークかつちょっぴりポップな創意で装った楽曲の数々が、山本の明るく豊かな音楽性と実によくマッチしている。二十五絃箏は師・二代野坂操壽が開発した楽器だが、山本はたっぷりとした量感で鳴らして新たなイメージを持った世界を開拓した。戸島も野坂も少し前に世を去ったが、彼らの残したものは新たな息吹を得て育っているようだ。(江藤光紀)トゥルク・フィルの首席奏者を務めるなど、フィンランドを中心に活躍するオーボエ奏者、髙島拓哉のソロ・デビュー盤はフランス作品集。一曲目のラヴェルの「ソナチネ」(オーボエとピアノ版)を聴くと、その細やかに伸び縮みし、滑らかに楽器を歌わせる手腕に引き込まれる。そして、透き通った響きのなかで、さまざまに表情を移ろわせるプーランクのオーボエ・ソナタ。望月晶のピアノも繊細な表現でオーボエに呼応する。メシアンの「ヴォカリーズ・エチュード」での、優しく包み込むようなオーボエの旋律と色彩さざめくピアノによる浮遊感あふれる演奏が印象的だ。(鈴木淳史)今年の秋に80歳を迎える名手エリザーベト・レオンスカヤの新譜はベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」と、ピアノと管楽のための五重奏曲。共演にはフランス国立青少年(フランセ・デ・ジュヌ)管弦楽団という若く才能溢れる学生集団を選んだ。指揮はデンマーク出身のシェーンヴァント。巨匠レオンスカヤに導かれた若者たちとの協奏曲は見事な化学変化を生み出し、しなやかでありながらも適切な重厚感を湛え、じっくりと歌い上げながらも推進力がある。実にノーブルな「皇帝」である。五重奏曲では温かな音色で呼吸を一つにし、丁寧かつ流麗にハーモニーを形成する。(飯田有抄)鈴木愛美(ピアノ)ORCHID CLASSICS/ナクソス・ジャパンNYCX-10543 ¥3000(税込)山本亜美(二十五絃箏)髙島拓哉(オーボエ)望月晶(ピアノ)エリザーベト・レオンスカヤ(ピアノ)ミヒャエル・シェーンヴァント(指揮)フランセ・デ・ジュヌ管弦楽団ERATO/ワーナーミュージック・ジャパン2173.272353 ¥オープン価格J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 前奏曲とフーガ第22番/シマノフスキ:メトープ/ハイドン:ピアノ・ソナタ第13番/シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番戸島美喜夫:ヴェトナムの子守唄〜二十五絃箏版〜、柿むき、鳥のうた/野村誠:編む 継ぐ む、世界をしずめる 踏歌 戸島美喜夫へコジマ録音ALM-144 ¥3300(税込)ラヴェル:ソナチネ(ダヴィッド・ヴァルター編)、ヴォカリーズ ハバネラ形式のエチュード/サン=サーンス:オーボエ・ソナタ/フォーレ:小品/プーランク:オーボエ・ソナタ/メシアン:ヴォカリーズ・エチュード/デュティユー:オーボエ・ソナタオクタヴィア・レコードOVCC-00181 ¥3850(税込)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、ピアノと管楽のための五重奏曲

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