eぶらあぼ 2025.6月号
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第144回 定期演奏会 9/15(月・祝)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp https://kioihall.jp他公演 9/16(火) 大阪/住友生命いずみホール(06-6944-1188) 9月、紀尾井ホール室内管弦楽団は、コンサートとオペラ、両輪で活躍中の阪哲朗を指揮台に迎えて定期公演を行う。テーマとなるのは「夏の夜の夢」だ。 最初の曲はウェーバーの《オベロン》序曲。シェイクスピアの『夏の夜の夢』のエピソードも含まれたオペラの序曲だ。室内管ならではの機動力を生かしたドラマティックな演奏が期待できよう。 今年3月、びわ湖ホールで阪はコルンゴルトのオペラを指揮して高い評価を得た。今回の演奏会でも、その作曲家の「左手のためのピアノ協奏曲」を取り上げる。戦争で右腕を失ったヴィトゲンシュタインの委嘱で書かれた作品の一つで、ラヴェルやプロコフィエフにも同種の協奏曲がある。そのなかでも、左手だけで弾いていることを聴き手に意識させない、もっともロマンティックな作風が特徴だ。この演奏される機会の少ない曲のソロに挑むのは、実力、人気とも頂点に立つピアニスト、阪田知樹というのも嬉しい。阪 哲朗(指揮) 紀尾井ホール室内管弦楽団 劇音楽の傑作とともに、新たな響きの空間へアンドレイ・ボレイコ ©Michał Zagórny阪 哲朗 ©Florian Hammerichツォトネ・ゼジニゼ ©Sophia Melkidze阪田知樹 ©Ayustet三宅理恵山下裕賀 ©Yoshinobu Fukaya第664回 定期演奏会〈サントリーホール・シリーズ〉 6/28(土)14:00 サントリーホール〈トリフォニーホール・シリーズ〉 6/29(日)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィルチケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp60文:林 昌英文:鈴木淳史 6月の新日本フィル定期は、今年没後50年のショスタコーヴィチの大作、交響曲第11番「1905年」を取り上げる。静かにデモ行進をしていた民衆が銃撃された、120年前の「血の日曜日」事件。後のロシア革命に繋がる事件をテーマとして、革命歌の引用も現れる描写的な構成のため、体制迎合作品のように見なされた時期もあったが、冴えわたる筆致による音楽の迫真性と奥行きある内容で、いまや彼の人気作のひとつに。凍てつく静寂から、壮絶極まりない轟音まで、オーケストラ表現の極北を体験できる、約60分ノンストップの大曲。不穏な時代の只中となった記念の年、この傑作に浸れる好機となる。 指揮はポーランド系ロシア人のアンドレイ・ボレイコ。深みと色彩感をたたえた演奏を聴かせる名匠で、2021年ショパンコンクール本選の指揮者として記憶する方も多いだろう。学生の頃に作曲者と会ったこともあるとのことで、そのボレイコの「11番」となれば、この時代ならではの無二のショスタコーヴィチ体験への期待が大きく膨らむ。 さらに注目を浴びそうなのが、ジョージア出身のわずか15歳の天才ピアニスト・作曲家、ツォトネ・ゼジニゼの登場。現代音楽作曲の天才少年として、3年前の母国のドキュメンタリー番組でバレンボイムに絶賛され、世界的にも知られる存在に。今回選んだ曲はストラヴィ コルンゴルトがウィーン時代から仕事を共にしていたのが、演出家のマックス・ラインハルトだった。渡米後、彼が映画『夏の夜の夢』を監督したときに、コルンゴルトはその編曲と指揮を担当する。 その映画でも使われたメンデルスゾーンの劇付随音楽「夏の夜の夢」。今回は、一般的に取り上げられる組曲版でなく、全曲版での演奏となる。2人ンスキーの「カプリッチョ」。新古典主義の作風による、多彩な楽想が連続する才気煥発な音楽で、ゼジニゼの現代音楽の才能、ピアニストとしての高い技巧と味わいを聴かせる。のソプラノ(三宅理恵、山下裕賀)と合唱(TOKYO FM 少年合唱団)も加わり、華やかで変化に富んだ幻想世界を奏でてくれるはずだ。 この公演より、紀尾井ホール室内管は、本拠地である日本製鉄紀尾井ホールの改修工事のために東京オペラシティで定期演奏会を行う。いつもと違うホールでの響きも楽しみだ。アンドレイ・ボレイコ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団バレンボイムも認めた15歳の天才ピアニストが登場!

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