eぶらあぼ 2025.6月号
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→C 小倉美春(ピアノ)□□□□□□□ピンカス・ズーカーマン ©Cheryl Mazak©Sho Kubota第1018回 オーチャード定期演奏会 6/22(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール第1019回 サントリー定期シリーズ 6/23(月)19:00 サントリーホール第171回 東京オペラシティ定期シリーズ6/24(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp51ピンカス・ズーカーマン(指揮/ヴァイオリン)東京フィルハーモニー交響楽団東京オペラシティ B響きを解き放つ未知なる鍵盤の旅文:柴田克彦文:江藤光紀 6月の東京フィル定期は、完璧な技巧と艶美な音色を持った世界屈指のヴァイオリン奏者、ピンカス・ズーカーマンが弾き振りで登場する。彼はヴィオラ奏者としても名高い偉大なる音楽家。指揮者としても、セントポール室内管、ナショナル・アーツセンター・オーケストラの音楽監督やロイヤル・フィルの首席客演指揮者等を歴任し、濃密で温かな音楽性を発揮している。 今回はまずエルガーの弦楽セレナードで、東京フィルの弦楽セクションを磨き抜いた演奏を披露する。この曲は作曲者初期のロマンティックな佳品。ズーカーマンはロイヤル・フィルを指揮したCDで振幅の大きな好演を聴かせているので、ここも期待は大きい。次いでは弾き振りによるハイドンのヴァイオリン協奏曲第1番。同曲を得意とするズーカーマンは、弾き振りで複数回CD録音を行い、艶やかなソロと典雅なアンサンブルで魅了している。今 バッハとコンテンポラリーを組み合わせてプログラミングするB→Cシリーズは、出演自体が “一流演奏家”として認知される登竜門。6月10日にはピアニストの小倉美春が登場するが、彼女の場合、コンポーザー・ピアニストという括りで理解するのがいいだろう。 桐朋学園大学でピアノと作曲を学んだ後、昨年までフランクフルト音楽舞台芸術大学に在籍、現在も同地を拠点に活動する。創造の最先端にピアニストとして参画するとともに、その感性を作曲にも生かし多数の委嘱を受け旺盛な作曲活動を展開している。行動力・実行力を兼ね備えた頼もしい若手だ。 今回のプログラムは、そんな小倉が活動の中で出会った作曲家たちを最初に並べ、小倉自身の新作を経て、バッハ、そして現代の古典とも言うべきノーノへとつなぐ。どれもピアノという歴史的に完成された楽器に挑み新しさを追求した、後世に残すべき作品回は、日本での実演が少ない名品を、最高水準の演奏で耳にする貴重なチャンスだ。そして後半はモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。言わずと知れた崇高で堂々たる名作だが、今やモダン・オーケストラの公演のメインとなるケースは稀ゆえに、終楽章をはじめとする精緻な音の綾といつになく豊麗な響きをじっくり堪能する得難い機会となる。 また開演30分前からズーカーマンと東京フィルメンバーによる「スペシャル・プレコンサート」が行われ、メンデルスゾーンの濃厚かつ爽快な名曲=弦楽八重奏曲の第1楽章が演奏されるのも大きな楽しみ。今回は弦楽器を主体とだと言う。 ハーモニクス(倍音)やクラスター(密集和音)など特殊奏法を用いた作品、オルゴール音やキーボード、さらには演奏者自身の声を使った作品、バスクラリネット(片山貴裕)、チェロ(山澤慧)、エレクトロニクス(有馬純寿)とのアンサンブルなど、幅広いラインナップが並ぶ。 自作初演では「B→C」を音名として組み込み、ピアノという楽器ならではの音のうごめきに着目する。またノーノの「…苦悩に満ちながらも晴朗な6/10(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp した豊かなサウンドに心置きなく浸りたい。波…」ではポリーニの録音と“共演”。現代のピアノへの多彩なアプローチの中で、バッハがどう聴こえるのかにも注目したい。妙なる弦の音を味わえる艶美な公演

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