eぶらあぼ 2025.6月号
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©Abby Mahlerカリーナ・カネラキス ©Mathias Bothorアリス=紗良・オット ©Pascal Albandopulos第1023回 定期演奏会Bシリーズ 7/4(金)19:00都響スペシャル 7/5(土)14:00サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp44文:江藤光紀文:飯尾洋一 長年、指揮者界は男社会だったが、状況はここ10年程度の間に急激に変わりつつある。女性指揮者が次々にデビュー、快進撃を続けオーケストラなどでポストを得るケースも珍しくなくなってきた。 ニューヨーク出身のカリーナ・カネラキスも着実にキャリアを重ね、才能を開花させている有望株。もともとはヴァイオリンを弾いていたが、次第に指揮を志すようになり、2010年代後半には各地での演奏を成功に導き名声を高めた。現在はオランダ放送フィルの首席指揮者(2019年~)、ロンドン・フィルの首席客演指揮者(2021年~)の任にあるが、前者のポストはつい先日、2031年まで任期が再延長され長期政権が確定した。世界各地の名門団体からの客演要請も次々に舞い込み、次世代指揮者陣のトップランナーの一人と目される。 そのカネラキスが都響公演で遂に 今もっとも勢いのある弦楽四重奏団がクァルテット・インテグラ。8月にはTOPPANホールで弦楽四重奏の系譜をたどるシリーズ第2弾となる公演を開く。クァルテット・インテグラは2015年桐朋学園在学中に結成され、21年バルトーク国際コンクール弦楽四重奏部門で第1位、22年ARDミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で第2位と聴衆賞を受賞して大きな注目を集めた。メンバーはヴァイオリンの三澤響果と菊野凜太郎、ヴィオラの山本一輝、チェロのパク・イェウン。24年3月よりパク・イェウンをメンバーに迎えて、新たなステップを踏み出した。  今回のプログラムはバルトークの弦楽四重奏曲第2番、ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」、ベルクの「抒情組曲」。意欲的なプログラムが好まれるTOPPANホールにふさわしく、1910年代から20年代に書かれた中東欧の傑作が集められ日本デビューを果たす。メインの曲目はマーラーの「巨人」。颯爽としたダイナミックな指揮ぶりで、都響を相手に大作シンフォニーをどう鳴らすか、実力をじっくりと体感するチャンスだ。 前半にはアリス=紗良・オットをソリストに招き、ラヴェルのピアノ協奏曲 ト長調。オットは一昨年リリースしたベートーヴェンのアルバムで、カネラキス率いるオランダ放送フィルと協奏曲第1番を録音しており、両者は勝手知ったた密度の濃い選曲だ。後期ロマン派とモダニズムの間で揺れ動きながら孤独と内省にたどりつくバルトーク、トルストイの小説への共感から若い人妻への情熱を芸術作品へと昇華させたヤナーチェク、12音技法を用いながらも8/5(火)19:00 TOPPANホール問 TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.comる仲。ラヴェルの協奏曲はベルリン・フィルでのデビューなど節目で取り上げている勝負曲だけに、こちらも要注目だ。これからの時代を作っていく女性パワーに期待が高まる。後期ロマン派の残り香を漂わせるベルク。三者三様のスタイルで時代を切り拓こうとする作曲家たちの姿が伝わってくることだろう。高度な技術に支えられた緻密なアンサンブルが、作品の核心に迫る。カリーナ・カネラキス(指揮) 東京都交響楽団欧州で地歩を固めるマエストラ、待望の日本デビュー!クァルテット・インテグラ II綿密なアンサンブルで描く20世紀作曲家の魂の調べ

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