eぶらあぼ 2025.6月号
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G・フレスコバルディ:オルガン作品集/和田純子ベートーヴェン:弦楽三重奏曲 op.3、同op.9-1〜3、ヴァイオリン ヴィオラとチェロのためのセレナーデ op.8オクタヴィア・レコードOVCL-00875(2枚組) ¥5500(税込)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第10番、同第3番、同第13番、同第14番「月光」/モーツァルト:幻想曲 K.397、ピアノ・ソナタ K.331より第3楽章「トルコ行進曲」/J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻より第1番久元祐子(ピアノ)収録:2024年9月、サントリーホール ブルーローズ(小)(ライブ)コジマ録音ALM-9280フレスコバルディ:トッカータ第5番、同第4番「聖体奉挙のために」、カプリッチォ「ルッジェーロのアリア」、同「カッコウ」、パッサカリアによる100のパルティータ 他録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9068 ¥3080(税込)プリングスハイム:管弦楽のための協奏曲/三善晃:管弦楽のための協奏曲/大栗裕:管弦楽のための協奏曲収録:2024年12月、日本製鉄紀尾井ホール(ライブ)妙音舎MYCL-00064 ¥3410(税込)配信SACDCDCD110ベートーヴェン:弦楽三重奏曲全集/アンサンブル天下統一久元祐子 ベートーヴェン・ツィクルス Vol.2管弦楽のための協奏曲―プリングスハイム、三善晃、大栗裕―/野平一郎&オーケストラ・ニッポニカベートーヴェンが四重奏に取り組む前に集中した全5作の弦楽三重奏曲。「天下統一」のセッション録音は、先行の喜遊曲的な2曲はのびやかな表現と名技を、堅固な作風の作品9は緊密な構築を聴かせる。しかし彼らほどの名人となると、緻密になるほどむしろ感性の自由度と余裕が増すかのよう。ことに作品9-1は圧巻で、後半楽章の追い込みには興奮すら覚える。ヴィオラの全方向への桁違いの表現力が核となり、チェロの盤石の支えに、ヴァイオリンが安定の超絶技巧で悠々と歌う。3人の関係性や表情まで浮かんでくるような、かつそれが楽曲の真価にも直結する、見事な快演集だ。(林 昌英)モーツァルトをはじめ、古典派の作曲家のスペシャリストとして活躍するピアニストの久元祐子。彼女は2023年からベートーヴェンのピアノ・ソナタの全曲演奏会に挑んでおり、本盤は昨年行われた第2回のライブ録音となっている。プログラムには第3・10・13番、そして第14番「月光」が選ばれた。いずれも当時の楽器の限界に挑んだ作品であり、1795年製のアントン・ヴァルターの復元楽器で奏でられたことで、その特別さをより強く実感できることだろう。久元の精緻な技術とニュアンスに富んだ音色はそれをさらに輝かせており、作品の新たな魅力にも数多く出会えるはずだ。(長井進之介)前情報なく当盤冒頭のトッカータ第5番を聴いたら、現代音楽かと思うかもしれない。だがこれは17世紀初頭のローマで活躍した初期鍵盤音楽の巨人・フレスコバルディの音楽だ。2巻のトッカータ集などからバランス良く選曲され、その技とファンタジーのエッセンスが楽しめる。カプリッチォの驚嘆の対位法、トッカータの幻想と神秘性、「パッサカリアによる100のパルティータ」の変転する疾走感。オルガン演奏はこの作曲家の大胆不敵な和声を体感するには好適だ。軽井沢ヴィラセシリア音楽堂のザニン工房製イタリアオルガンを知り尽くした和田純子が、17世紀の前衛の真価を伝えてくれる。(矢澤孝樹)20年以上にわたり埋もれた日本の管弦楽曲を蘇演してきたオーケストラ・ニッポニカが、昨年末「管弦楽のための協奏曲」を集めた演奏会を開催。これはその模様だ。日本で最初に作曲したのは東京音楽学校に招かれていたクラウス・プリングスハイムで、1934年のこと。日本的な旋律にモダンなオーケストレーションを施した30分単一楽章の作品。戦前の東京でこれが響きわたっていたというのが痛快だ。三善作品の他に「浪速のバルトーク」の異名を取った大栗裕のバーバリスティックな作品(1970年作曲)も収録。こちらは朝比奈隆のドイツ客演のために作曲された。“オケ・コン”の歴史は意外に国際的なのだ。(江藤光紀)アンサンブル天下統一【長原幸太(ヴァイオリン) 鈴木康浩(ヴィオラ) 中木健二(チェロ)】和田純子(オルガン)野平一郎(指揮)オーケストラ・ニッポニカ

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