□□□Voces Intimae/The 4 Players TokyoCDCDSACDCD108サントゥ・コンダクツ・ショスタコーヴィチ/サントゥ=マティアス・ロウヴァリ&フィルハーモニア管メシアン:ピアノ作品全集5/宮崎明ブルックナー:交響曲第7番/ジョナサン・ノット&東響香フィンランド出身の気鋭が、2021年9月から首席指揮者を務めるイギリスの名楽団を振った最新録音。3季目に入った両者の関係の深まりを反映した演奏でもある。とかく色々なことを言われる作品だが、ロウヴァリは純粋器楽交響曲としての音の綾を明確かつしなやかに表出している。すなわち、様々な動きを明瞭・的確に打ち出せば、凄みや悲劇性は自然に生まれるといった方向性。第2楽章は滑らかに疾走し、第3楽章のホルンのソロも柔らかく、第4楽章の木管の動きは瑞々しい。完成から70年以上経った曲にまとわりつく“澱”を取り払ったかのような快演。 (柴田克彦)パリとスイスで研鑽を積み、現代作品の演奏が高く評価されている宮崎明香。2016年からリリースを続ける「メシアン ピアノ作品全集」の第5弾が出た。今回は25分半におよぶ大曲「エローに棲まうムシクイたち」を収め、饒舌な“鳥の声”を生命力溢れるリズム感で聴かせる。一方で、パリ音楽院の試験曲「ロンドー」やエコール・ノルマルの初見視奏曲、2002年出版の「ピアノのための前奏曲」など3分に満たない小品も組み合わせ、切れ味の鋭いタッチや、混濁のない伸びやかな和声の響きによって、メシアンの凝縮されたピアノ音楽の世界観を届ける。 (飯田有抄)フレーズの作りから、ハーモニーやバランスの組み立て、すべてが丁寧に形作られたブルックナーだ。ノットの音楽監督としての総決算となる演奏の一つとなるだろう。以前はもっとサバサバと進行していたノットと東響のブルックナーだが、今回は全体としてしなやかに、音楽の縦と横の綾を紡いでいく。アダージョ楽章での主題間の描き分けも濃厚だ。冒頭楽章の最後のクライマックスでは、均衡が危うくなるほどにティンパニが激しいトレモロを響かせる。その峻厳さによってコーダを導くといった筋道なのだろう。とはいえ、その強弱の推移だって丹念なまでにデザインされているのだ。(鈴木淳史)The 4 Players Tokyoは、指揮者・藤岡幸夫がTV番組『エンター・ザ・ミュージック』でプロデュースした弦楽四重奏団で、そのデビューCD。最初のベートーヴェンから高精度のアンサンブルを聴かせる。ハ短調のパトスが若々しく爆発する。ヤナーチェク「クロイツェル・ソナタ」は、愛と嫉妬の火花が煌めく。独特の和声と響きの感覚がよく捉えられている。愛は妨害され、狂気と妄想に変わり、自我は破壊される。ヤナーチェクの世界にハマる演奏だ。シベリウス「親愛なる声」も独特の響きと世界観が楽しめる。中心楽章アダージョには深い祈りがあり、対話を交わす声が静かに響いてくる。聴きごたえのある一枚だ。(横原千史)サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(指揮)フィルハーモニア管弦楽団Signum/東京エムプラスXSIGCD 889 ¥3300(税込)宮崎明香(ピアノ)ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団The 4 Players Tokyo【戸澤哲夫 遠藤香奈子(以上ヴァイオリン) 中村洋乃理(ヴィオラ) 矢口里菜子(チェロ)】Sonare RecordsSONARE1068 ¥2640(税込)ショスタコーヴィチ:交響曲第10番メシアン:忘れられた捧げもの、エローに棲まうムシクイたち(ロジェ・ムラロによる再構成版)、ロンドー、カンテヨジャヤー、ピアノのための前奏曲、「エコール・ノルマル音楽院ピアノ試験のための初見視奏曲」より〈視奏I〉録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9069 ¥3080(税込)ブルックナー:交響曲第7番(ノーヴァク版)収録:2024年7月、サントリーホール(ライブ)OVCL-00877 ¥3850(税込)ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番/ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」/シベリウス:弦楽四重奏曲「親愛なる声」
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