eぶらあぼ 2025.6月号
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第12回 浜松国際ピアノコンクール 2024CDCDCDCD106マーラー:交響曲第6番「悲劇的」/佐渡裕&トーンキュンストラー管ハイドン「5度」&ベートーヴェン弦楽四重奏曲第3番/クァルテット・インテグラある午後、ファン・スヴィーテン男爵のサロンより/七條恵子コロナ禍を経て6年ぶりに開催された2024年第12回浜松国際ピアノコンクールは過去最多、638名の応募となった。その頂点に輝いた入賞者7名による熱演のハイライトがCD2枚組に収められて登場。優勝者の鈴木愛美の演奏はシマノフスキやフォーレの独奏のほか、闊達に奏でたベートーヴェンの協奏曲第3番やモーツァルトのピアノ四重奏曲第2番も収録。小林海都(第3位)のニュアンスに満ちたラヴェルや、ヨナス・アウミラー(ドイツ・第2位)の起伏に富んだリストの演奏など、コンクールならではの緊迫感と集中力のみなぎるパフォーマンスが高音質で蘇る。(飯田有抄)スケールの大きな音楽づくり、情熱的なサウンドでオーケストラを牽引する指揮者の佐渡裕と、ウィーンの名門楽団、トーンキュンストラー管。彼らが本ディスクで奏でるのはマーラーの交響曲第6番である。古典的なスタイルをとりながら、「悲劇的」という通称もある通り、生や死、混沌や希望などあらゆるものが込められた大作だ。佐渡は得意とするドラマティックな音楽づくりでオーケストラを力強く導き、鮮烈な音色を紡ぎ出す。楽曲の構造はもちろんだが、内包された物語を見事に描き出し、聴き手へと“魅せる”ように奏でている。  (長井進之介)クァルテット・インテグラの第4弾のディスクが早くもお目見えした。絶妙なバランス感は相変わらず無双。旋律とリズムの対比、色彩的なハーモニー、細やかなフレージング…それらが合わさって生まれるしなやかさは、4人のアンサンブルを動かす超越的な意思の存在すら感じさせる。ヴィブラートは薄目なのに音色がしっとりと溶けあい、メロディラインやオブリガートが美しく際立つ。音楽作りにも深みが感じられ、ハイドンのメヌエットやどっしりと落ち着いて構成したベートーヴェンにはベテランの風格すら漂う。チェロのパク・イェウンも初共演から1年を経て十分に馴染んできたようだ。(江藤光紀)歴史が重層的にたくし込まれた一枚だ。主役はモーツァルトだが、ウィーン時代初期に出入りした外交官ファン・スヴィーテンのサロンで知った大バッハ、そしてC.P.E.バッハの音楽が組み合わされ、対位法などバロック期の技法をモーツァルトが取り入れてゆくドキュメントとなっている。また1802年製のフォルテピアノが用いられ、揺らぎと即興性に富むロマン派のモーツァルト演奏が再現される。そして肝心なのは、七條恵子という優れた奏者が、そこに現代を生きる音楽家の魂を吹き込んでいること。奔流のようなパッションと俯瞰の冷静な視点が両立する。かくして、モーツァルトの音楽は未来へと向かう。(矢澤孝樹)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番より第3楽章/フォーレ:ヴァルス・カプリス/ラヴェル:優雅で感傷的なワルツ/モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番より第1楽章/リスト:「伝説」より〈波を渉るパオラの聖フランチェスコ〉 他鈴木愛美 ヨナス・アウミラー 小林海都(以上ピアノ) 他収録:2024年11月、アクトシティ浜松(ライブ)コジマ録音ALM-7309,7310(2枚組) ¥4180(税込)マーラー:交響曲第6番「悲劇的」収録:2023年10月、ウィーン(ライブ)エイベックス クラシックスAVCL-84176〜7(2枚組) ¥2200(税込)ハイドン:弦楽四重奏曲第61番「5度」/ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番ナミ・レコードWWCC-8030 ¥3300(税込)佐渡裕(指揮)トーンキュンストラー管弦楽団クァルテット・インテグラ【三澤響果 菊野凜太郎(以上ヴァイオリン) 山本一輝(ヴィオラ) パク・イェウン(チェロ)】七條恵子(フォルテピアノ)Challenge Classics/東京エムプラスXCC 720004 ¥3300(税込)J.S.バッハ:シンフォニア第9番/モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番、同第14番、転調するプレリュード(ヘ長調からハ長調へ)、幻想曲 ハ短調/C.P.E.バッハ:クラヴィーア小品 イ長調

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