上野耕平 ©Yuji Ueno宮本典子稲垣 聡 ©Chopalisz/Mariko TAYA松本宗利音中川賢一 ©Shuhei NEZU加藤訓子 ©Michiyuki Ohba第380回 定期演奏会 7/3(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp61文:江藤光紀文:伊藤制子 今年4月から大阪フィルの指揮者に迎えられ大きな飛躍が期待される松本宗利音は、2017年から2年間、東京シティ・フィルの指揮研究員として研鑽を積んだが、7月にはブラームスの交響曲第2番をメインに据えた魅力的なプログラムを引っ提げて、古巣の定期の舞台に登場する。彼の「しゅうりひと」という名前はドイツの大指揮者シューリヒトにちなんだもので、また研究員時代にはドイツ音楽の名匠・飯守泰次郎の薫陶も受けた。その松本のブラ2、伝統を継承しつつも現代的なセンスで作品の神髄に肉薄するものとなろう。 組み合わされるプログラムも興味深い。まずはブラームスとゆかりの深いドヴォルザークから交響詩「英雄の歌」。アメリカから帰国後、ドヴォルザークはオペラ創作に入る前の円熟期に5曲の交響詩を作曲しているが、これはその最後のもので、重苦しく始まり華々しい勝利の凱歌で閉じられる隠れ名作。タイト ピアノの稲垣聡と中川賢一、打楽器の加藤訓子と宮本典子。アンサンブル・ノマドが誇る名手4人が満を持してのぞむ第84回定期演奏会のテーマは、「まなざし、あるいは差異の煌めき vol.1:打つ!そして弾けるリズム!!」。幾多の難曲を手中に収めてきた腕利きのメンバーたちがゲストにヴォーカル(ラップ)のDARTHREIDER(ダースレイダー)を迎え、リズムを刻むことの原点に回帰しつつ、極彩色の世界を展開する。 プログラムは練りに練ったものだ。ケージの「クレド・イン・アス」はブラック・ユーモアも含んだ異色作で、「打つ」面白さを開眼させてくれる。武満徹の「クロス・ハッチ」はマリンバとヴィブラフォン、または2台の鍵盤楽器のための1分ほどの小品だが、洒脱な抒情味を感じることができよう。繊細な音像が光の陰影のようにきらめく三善晃の「響象 I、II ~2台ピアノのための」では、名ピアニスト二人の至芸を堪能しルには作曲と同じ年に亡くなった恩師ブラームスとの関連を指摘する説もある。 続いて大人気サックス奏者・上野耕平が登場し、まずはミヨーの「スカラムーシュ」。3楽章からなる明るくリズミカルな音楽で、特に「ブラジルの女」と題された終楽章のサンバは客席を賑やかたい。ノマドと長きにわたり友好関係にあるアルゼンチンのアレハンドロ・ビニャオ。ノマド結成25周年記念委嘱新作でも話題になったが、今回は彼の「リフ」を取り上げる。題名はロックにおいて曲中で反復される短いフレーズを指す。この作曲家ならではのグルー5/11(日)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール 問 キーノート0422-44-1165 http://www.ensemble-nomad.comな楽しい気分で満たすことだろう。続いて上野自身が委嘱した逢坂裕のアルトサックスのための協奏曲。逢坂は藝大出身の若手作曲家で、上野はサクソフォンの官能性を生かした旧作を手掛け録音も残している。モダンな作品に対する松本のアプローチにも注目だ。ヴィーな感触に満ちた作品だ。ドイツのハイナー・ゲッベルスの「サロゲート」(身代わり)では、ピアノと打楽器に声が加わり、絶え間ない応酬をくり広げるさまに注目したい。締めくくりはライヒの「カルテット」。名手4人の饗宴に乞うご期待!松本宗利音(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団古巣へ帰還し披露する渾身のブラームス第2番アンサンブル・ノマド 第84回定期演奏会降り注ぐリズムの鼓動に耳をすませて
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