eぶらあぼ 2025.5月号
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©Martin Chiang左より:鈴木皓矢、廣瀬心香、石川武蔵Interview60シリーズ初! 昼夜異なるプログラムで贈る、詩情あふれるステージ取材・文:岸 純信(オペラ研究家)文:長井進之介第179回 リクライニング・コンサート中嶋俊晴(カウンターテナー) & 岡本拓也(ギター) /白取晃司(ピアノ)6/12(木)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jp※出演者は各回で異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 廣瀬心香(ヴァイオリン)と鈴木皓矢(チェロ)、石川武蔵(ピアノ)によるピアノ三重奏団「TRIO VENTUS(トリオ・ヴェントゥス)」。独墺の音楽をはじめとする多彩なレパートリーで聴衆を魅了してきた彼らは、2024年に第33回青山音楽賞バロックザール賞を受賞、CDもリリースするなど、飛躍の年を迎えた。ますます勢いを増すなか、今年のリサイタルでは新境地ともいえるプログラムを披露する。中心となるのはチェコを代表する作曲家、ドヴォルザークの円熟期の作品であり、重厚な構成とロマンティックな詩情が漂うピアノ三重奏曲第 Hakuju Hallの名物「リクライニング・コンサート」は、休憩なし1時間でゆったりと音楽を楽しむステージ。マチネとソワレで2回行われるが、この6月に登場のカウンターテナー中嶋俊晴は、同ホール初の「プログラム&共演者が異なる2ステージ」を挙行! ひときわ多彩な歌の世界に期待大である。 「滋賀県彦根市の出身です。原風景がまだ残る地域で、日本語の歌を歌うときには、故郷の土の感触や空気感が詩の世界にダイレクトに繋がるかと思います。今回の昼公演はギターの岡本拓也さんとの共演です。彼とはウィーン留学中に出会いました。それは繊細な音を奏でる人で、『爪弾くってこういうことか!』と実感させてくれますし、曲をアレンジする才能も素晴らしいので、武満徹の『SONGS』を彼のギター伴奏で歌えるのがとても嬉しいですね。他には〈埴生の宿〉や〈サリーガーデン〉など英語の曲を取り上げます。ロンドン留学中にスコットランドなど各地を旅しましたが、曇天ばかりで健康的に大丈夫か? と思うぐらいなのに、現地の皆さんは歌うとみな元気になる(笑)。歌に特化した国と思うほどですね」 中嶋の声音はカウンターテナーでは珍しく暗めで肉厚、温かい。日本語も英語も優しく柔らかく表現する逸材で3番。彼らの艶やかでニュアンスに富んだ音色と構築力が活きることだろう。そこに並ぶのは、ドヴォルザークの影響を受けたマルティヌーの「牧歌集」、複雑なリズムと超絶技巧が凝らされたエリオット・カーターの「エピグラム」。それぞれの卓越した技術、厚い信頼関係によって生み出されるアンサンブルの調和を堪能できる楽曲で、いま注目のピアノトリオの演奏を堪能しよう。6/4(水)19:00 豊洲シビックセンターホール6/8(日)14:00 京都/青山音楽記念館バロックザール問 TRIO VENTUS trioventus03@gmail.com https://www.trioventus.comある。では夜公演の内容は? 「長年の共演者、ピアノの白取晃司さんとフォーレやグリーグの歌曲を中心に取り上げます。白取さんはフランスものに通じた方なのでまずはフォーレを。また、グリーグでは名曲〈君を愛す〉など3曲をノルウェー語で歌います。ウィーンにはこの国からの留学生がたくさん居て、いっときノルウェー語でやたら歌わされ喋らされました(笑)。彼らの歌には独特のリズムや節回しがあり、静かでも脈打つものがある。理由を尋ねても『鹿肉ばかり食べているからかな』とか言われてよく分からなかったですが(笑)」 大らかな気構えのもと、歌への確たる思いも示す中嶋。自身の原風景も尋ねてみた。 「野球少年でしたが高校3年の9月に音大受験を決め、京都市立芸大に入り三井ツヤ子先生に師事しました。声楽専攻は一学年14名のみで密な時間を過ごしましたが、卒業後は先生の恩師の名ソプラノ、故アーリーン・オジェーの芸術性にも心酔し、ニューヨークで歌ったときは彼女のお墓があると聞き、詣でたほどです。お目にかかったこともない方ですが、遺された歌声を聴くと『他の歌手にはない美しいレゾナンス(共鳴)』を感じます。彼女のように僕自身も、詩を捉える感性を発揮してゆきたいです!」トリオ・ヴェントゥス(ピアノ三重奏団) リサイタル 〜Bohemian ethos〜躍動感あふれる若きトリオが登場!中嶋俊晴(カウンターテナー)

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