©FUKAYA/auraY2ゲザ・ホッス=レゴツキ59文:香原斗志ゲザ・ホッス=レゴツキ meets 新日本フィルハーモニー交響楽団アルゲリッチら巨匠たちが絶賛する才能をブラームスで味わい尽くす文:鈴木淳史垣岡敦子 AMORE 〜愛の歌 10周年記念 オペラ・ガラ・コンサート日本を代表する歌手たちによる豪華な饗宴 ゲザ・ホッス=レゴツキというヴァイオリニストはご存知だろうか? マルタ・アルゲリッチと音楽祭などで共演している、あのエキゾティックな表現の持ち主と聞いて気づいていただければ話が早い。 1985年にスイスのローザンヌで、ハンガリーのロマ・ ヴァイオリンの伝統を受け継ぐ直系の後継者として生まれたゲザ。ウィーン音楽院で学び、これまでルッジェーロ・リッチ、イヴリー・ギトリス、イダ・ヘンデル、ティボール・ヴァルガといった巨匠に師事したことからも、彼の演奏スタイルがなんとなく想像できるのではないだろうか。 独特なヴィブラートを駆使してハスキーに歌われる旋律、テンポやデュナーミクの激しい変化など、ロマ音楽の伝統をクラシカルなレパートリーで存分に生かすゲザ。そんな抑揚に富む、自由なスタイルと感性をもつ彼が、すみだトリフォニーホールでオール・ブ 垣岡敦子の歌はあたたかい。辺りの空気が温もりで包まれるようだ。力に頼らず自然に広がるその声は、高音の極上の響きと珠玉のピアニッシモを伴い、耳にやさしく届く。ドラマティックな役を歌ってもやわらかさは失われず、強さが内包される。 イタリアからの完全帰国後に始めた「AMORE~愛の歌」シリーズが、10年の長きにわたって支持される理由は、垣岡の歌のそんな魅力にある。 Vol.6からはオペラのハイライト版を上演しており、昨年はグノー《ロメオとジュリエット》を満喫させてくれた。垣岡自身による的を射た演出のもと、ワルツの快活な華やぎ、のちの悲劇が濃さを増す甘い二重唱、仮死状態になる薬を飲む前の凛とした決意。ジュリエットを歌った垣岡の、やわらかくも骨太な歌唱が筆者の耳に残っている。 そして、今回は10周年を記念した「オペラ・ガラ・コンサート」。節目にふさわしラームスによる公演を行う。 前半は、沼沢淑音とのデュオによるリサイタル。ヴァイオリン・ソナタ第3番やハンガリー舞曲集からの抜粋を取り上げる。柔軟かつ繊細な感覚をもった実力派ピアニストとの共演では、ブラームスが大きく影響を受けたロマ音楽のエッセンスが感じられる、インパクトの強い演奏を期待していい。 後半は、沼尻竜典の指揮する新日本フィルとヴァイオリン協奏曲を演奏。沼尻ならではの濃密な表現が、ゲザのヴァイオリンと共鳴、フレーズの一つひとつが香り立つようなブラームスを聴かせてくれるだろう。5/31(土)15:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 https://www.triphony.comい豪華な内容である。Vol.9のロメオのほか、Vol.8のプッチーニ《蝶々夫人》でピンカートン、Vol.7の同《トスカ》でカヴァラドッシ、Vol.6のマスネ《マノン》でデ・グリューを歌ってきた、このシリーズのパートナーでもあるテノールの宮里直樹のほか、《トスカ》のスカルピアを歌った上江隼人、《蝶々夫人》のスズキを歌った但馬由香と、日本を代表する歌手陣が揃う。 そして、まさに上に挙げた4つのオペラから、ハイライトの中のハイライトがたっぷり味わえる。ピアノはシリーズの音楽監督でオペラを知り尽くした村上尊志。濃密な2時間が約束されている。5/24(土)15:00 王子ホール問 新演コンサート03-6384-2498 https://www.shin-en.jp
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