eぶらあぼ 2025.5月号
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左より:ミケーレ・マリオッティ/マキシム・ミロノフ ©Ksenya Ryzhkova/ダニエラ・バルチェッローナ ©Ph.Studio Amati Bacciardi/ハスミック・トロシャン/マルコ・ミミカ ©Gemma Escribano©ZIGEN川崎定期演奏会 第100回 6/7(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール第731回 定期演奏会 6/8(日)14:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp場の今シーズンの開幕演目、ヴェルディ《シモン・ボッカネグラ》も異次元だった。あらゆる感情に想像を超えた深みと凄味が加わり、歌手にも細やかな表現が求められ、奥行きのある内面のドラマが構築された。 マリオッティはいつも楽曲から予想しきれないほどの情報を引き出し、それまで気づかなかった音楽の潜在力を指し示す。そんな指揮者は稀にしかいない。だからモーツァルトの交響曲第25た哲学、信念、そして作曲家の野心や夢が反映されているといえる。これらを、協奏曲(独奏版)やソナタなど、ジャンルごとの5つの部に分けて、朝10時から夕方16時半ごろまでじっくりと紹介してゆく。 どんなときもショパンをライフワークの一つとする信念を貫き、長きにわたって向き合い続けてきた横山。彼の持ち味であるみずみずしくクリアな音が紡ぐショパンは、自然体で、ますます自由度を増し、また次のステップに向かっているといえるだろう。その道すじを追う、年に一度の機会。会場に足を運んで今の演奏を確かめたい。5/5(月・祝)10:00~(全5部構成) 東京オペラシティ コンサートホール 問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp56文:香原斗志文:高坂はる香 マリオッティが来る。彼の十八番でロッシーニの大傑作「スターバト・マーテル」を指揮する。この事実の前に興奮を抑えられない。彼が振るロッシーニは常に特別で、テンポは柔軟に変化し、デュナーミクの扱いが自在で、作曲家の息遣いや鼓動に触れているかのように感じる。 ロッシーニに限らない。2023年6月、東京交響楽団を指揮したシューベルトの交響曲第8番「グレイト」。大きく抑揚がつけられ、やはり人間の息や鼓動のように脈打ち、とても柔らかいが芯があり、しっかり地を踏みしめていた。音楽監督を務めるローマ歌劇 彼の背中を押し続けるのは、探究心か、使命感か。ゴールデンウィーク恒例となったピアニスト横山幸雄の「入魂のショパン」は、今回でVol.16を迎える。 シリーズ序盤でショパンの全ピアノ作品を一度に網羅するという大仕事を成し遂げたあとは、少しずつアプローチや趣向を変えながら、ショパンの全体像を捉える試みを続けてきた。弾くほうはもちろん、聴くほうも体力を要す長丁場のシリーズだが、年を重ねてもこれに通い続けることを楽しみに、健康維持に気をつけているというファンもいると聞く。 その期待に応えて今回、横山が取り上げるのは、ショパンの代表的な大作ばかりをセレクトしたプログラム。 若き日から晩年まで、人生のさまざまなステージで、ショパンが細かな工夫を織り込み、構成を練り上げ、時間をかけて仕上げた大曲には、マズルカやノクターンのような小品とはまた違っ番もとても楽しみだが、特に十八番のロッシーニは、種々の経験を重ねて生命力を増している。いま、この作曲家がオペラの筆を折った後に書いた「最高傑作の一つ」(マリオッティ談)を聴くことの価値は、言い尽くせないほどだ。 しかも歌手はマキシム・ミロノフ、ダニエラ・バルチェッローナ、ハスミック・トロシャン、マルコ・ミミカ。世界屈指のロッシーニ歌手ばかりだ。こう書きながら、やはり興奮が抑えられない。ミケーレ・マリオッティ(指揮) 東京交響楽団ローマ歌劇場の若き音楽監督による異次元のロッシーニ横山幸雄 ピアノ・リサイタル “入魂のショパン” Vol.16詩情と技巧が交差する作曲家の美意識

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