eぶらあぼ 2025.5月号
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クシシュトフ・ウルバンスキ ©Grzesiek Martアンナ・ツィブレヴァ ©Anna Gryzlova山田武彦 ©井村重人森谷真理 ©TAKUMI JUN第1021回 定期演奏会Bシリーズ 5/16(金)19:00都響スペシャル 5/17(土)14:00サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp55文:柴田克彦文:片桐卓也 東響におけるウルバンスキの演奏は常に新鮮で刺激的だった。それは彼が既成概念を排したアプローチで楽曲を再構築するからだ。1982年ポーランド生まれのウルバンスキは、様々なポストを経て、現在ワルシャワ・フィルの音楽・芸術監督、ベルン響の首席指揮者等を務めており、2012~16年には東響の首席客演指揮者として多大なインパクトを残している。その彼が都響と初共演を果たす。稀有の鬼才が高い機能性を誇る同楽団を振っていかなる音楽を聴かせるのか? すこぶる興味深い。 プログラムは、まず縁の深い自国の大家ペンデレツキの代表作「広島の犠牲者に捧げる哀歌」。激烈な響きに貫かれた本作は、52の弦楽器群による楽曲だけに都響の重層的な弦楽サウンドが存分に生かされる。むろん戦後80年に思いを巡らせる意義深い選曲でもある。おつぎはショスタコーヴィ 武蔵野音楽大学・同大学院を卒業した後、ニューヨークのマネス音楽院で学び、2006年にメトロポリタン歌劇場で《魔笛》の〈夜の女王〉を歌って絶賛された森谷真理。日本でも各所で大活躍中である。一方で、昨年から王子ホールでスタートした「森谷真理 Spirit of Language -言霊- 」のシリーズ第1回では、詩人ボードレール、ヴェルレーヌ、マラルメなどの詩を元に書かれた近代フランス歌曲を集めて、これまで知られてこなかった森谷の新たな一面を見せてくれた。 その第2回は「Harawii 愛と死の歌」とサブタイトルが付けられ、アルバン・ベルク「初期の7つの歌」とメシアン「ハラウィ 愛と死の歌」が取り上げられる。特に注目されるのがメシアンの「ハラウィ」だ。大学の音楽史の授業でメシアンという作曲家を知り、アメリカ留学中にコレペティトゥアの先生からこの曲でコンクールに挑戦してみないかと提案されチのピアノ協奏曲第2番。メロディアスで軽妙な本作は、「広島~」の僅か3年前(1957年)に作曲されており、その対照が耳を奪う。同曲では15年リーズ国際ピアノコンクールで優勝後、世界的に活躍するロシア出身の名手アンナ・ツィブレヴァがソロを弾くので、こちらも大注目だ。そして後半はショスタコーヴィチの交響曲第5番。お馴染みの名曲だが、ウルバンスキは、以前首席客演指揮者を務めたNDRエルプフィルとのCDで、明快な曲に潜む悲劇性を描出して、初めて取り組んだという。1945年に書かれた「ハラウィ」は全12曲から構成される大作で、民族音楽学者であったダルクール夫妻が収集したペルーの民謡集に基づいた作品。歌詞はメシアン自身によるが、「ハラウィ」とは“抵抗しようのない、しかし成就しない愛”を思い起6/13(金)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jpた凄演を展開しているだけに、新たな視点による名演に期待がかかる。 表面上はショスタコーヴィチ没後50年を記念した公演だが、これ実は終始耳を離せない意味深長なコンサートだ。こさせる言葉だという。フランス語の他、ペルーのケチュア語に基づく擬音、人工語も盛り込まれている難曲として知られ、全曲を聴けることはあまりない。ピアノは共演を重ねる山田武彦。まさに旬の歌手である森谷の歌唱で、メシアンの傑作を聴く貴重な機会となる。クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京都交響楽団鬼才が清新な凄演で魅せる注目の初共演森谷真理 Spirit of Language -言霊- Vol.2鮮烈な和声とリズムで描く究極の愛の詩

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