eぶらあぼ 2025.5月号
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ユリアンナ・アヴデーエワ ©Christine Schneider©武藤 章ウラディーミル・フェドセーエフ第2039回 定期公演 Aプログラム 6/7(土)18:00、6/8(日)14:00 NHKホール問 N響ガイド0570-02-9502 https://www.nhkso.or.jp47文:柴田克彦文:伊藤制子 今年93歳を迎える巨匠フェドセーエフが、6月のN響定期に登場する。2023年秋の客演が流れてしまったので、今度こそ実現してほしいと願うばかりだ。彼は、音楽監督を務めるモスクワ放送響(現チャイコフスキー響)とのコンビで半世紀にわたってお馴染みであるほか、世界各地の著名楽団や歌劇場に客演し、N響とも2013年以来再三共演して相性の良さを示している。長老格の指揮者ながら衰えなど微塵もなく、常に自然体で力強さと味わいのある音楽を生み出す奇跡的存在だけに、今回も胸踊らせて本番を待ちたい。 演目は十八番のロシアもの。最初のリムスキー=コルサコフ《5月の夜》序曲は、民謡を素材とした作品で、ロシアの民俗楽団も率いたフェドセーエフの持ち味がフルに発揮される。次のラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」では、2010年ショパン国際コンクール優勝から15年を経たユリア 今年はラヴェル生誕150年。パリでは大規模な展覧会も開催され、世界中が彼の音楽で満たされる一年になることだろう。この作曲家の主要作品は、オーケストラ、室内楽、そしてピアノ・ソロなど多岐にわたるが、ラヴェルを得意とするピアニストの中でも際立つ存在がパリ生まれのパスカル・ロジェ。早くからその才能の誉れ高く、パリ音楽院卒業後、ロン=ティボー国際コンクール優勝、17歳でデッカ専属レコーディング・アーティストに就任した。以後、世界各地でコンサートを開催しており、プーランク、サティ、フォーレ、サン=サーンスにくわえ、特にラヴェルとドビュッシーの演奏は、多彩な響きと典雅で洒脱なスタイルをもち、他の追従を許さない。 来日公演もたびたび行い、日本の音楽ファンにフランス・ピアニズムの神髄を届けてきたロジェ。7月22日開催のリサイタルは、ラヴェルとドビュッシーンナ・アヴデーエワがピアノ独奏を務める。幅広い楽曲において構築感に優れた細やかで情感豊かな音楽を聴かせている名手が、祖国の代表的名曲を同国の巨匠の指揮で弾くとなれば、これまた聴き逃せない。そして後半はチャイコフスキーの「悲愴」交響曲。フェドセーエフは第4楽章をアンダンテ(通常はアダージョ)で演奏するなど独という王道プログラムだ。ラヴェル作品からは、広く親しまれている「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ソナチネ」。そしてこの作曲家ならではの冴えたテクニックと響きに彩られた「鏡」は、第1曲〈蛾〉から神秘的な響きに引き込まれてしまうが、第4曲〈道化師の朝の歌〉はスペイン情緒が濃厚に感じられる名作である。そしてドビュッシーでは「前奏曲集 第1巻」を取り上げる。〈亜麻色の髪の乙女〉〈沈める寺〉など、よく知られた曲も含まれており、豊穣な世界へといざなってくれる。ロジェの名演が待ちどおしい。7/22(火)19:00 浜離宮朝日ホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 https://www.pacific-concert.co.jp他公演 7/24(木) 大阪/ザ・フェニックスホール(06-6363-7999)    7/27(日) 愛知/宗次ホール(052-265-1718)自の解釈をみせているし、超有名な同曲をN響で取り上げるのは意外にも初めてだという。しからば今回は、自信のアプローチに円熟味が加わった新鮮かつ奥深い名演を展開してくれるに違いない。 この“世界的無形文化財”の至芸に触れるのは、確実に“一生もの”の体験となる。ウラディーミル・フェドセーエフ(指揮) NHK交響楽団自然体の巨匠が紡ぐ十八番の名曲を聴く幸せパスカル・ロジェ ピアノ・リサイタルラヴェル&ドビュッシー、フランス音楽の粋を集めて

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