eぶらあぼ 2025.5月号
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108フランスの名手が奏でる20世紀のヴァイオリン協奏曲集。1歳違いのハーディングの指揮も新鮮な、気鋭の同世代共演によるアルバムである。カピュソンのヴァイオリンは、ビロードのような音色で芳醇かつ流麗だ。シベリウスは甘美な中にも緊張感を湛えた演奏。この相反する特質がこれまでにない表現を生み出しており、豊潤な音でじっくりと奏される第2楽章も、力感と推進力に満ちた第3楽章もいつになくパッショネイトだ。一方のバーバーは彼の音色にピッタリ。第1、2楽章の抒情美、第3楽章の鮮烈な技巧等を通して、同曲の魅力発見の喜びを与えてくれる。 (柴田克彦)昨年デビュー10周年を迎えた人気サクソフォン奏者の6thアルバム。イベール作曲の名曲で華やかに幕を開け、続くは「田園詩」と訳される鮮烈なアルバム表題曲(旭井翔一への委嘱作)。同曲、そしてJ.ウィリアムズが自作の映画音楽を3楽章の協奏曲にまとめた「エスカペイド」でも盟友のピアニスト山中惇史との駆け引きが絶品。そしてこの2人にバンドネオンの名手・三浦一馬を加えた2つのピアソラ・ナンバーがさらに圧巻。カヴァーでは王道の美しさをたたえた『ゴッドファーザー』に加え洗練極まる「赤とんぼ」に驚かされる。山本菜摘による終曲「アンコール・ピース」も心憎い。(東端哲也)ノットと彼が音楽監督を務める東京交響楽団のベートーヴェンのリリースは、2020年の「第九」に続く第2弾となる。今作は第6番「田園」と第1番のカップリングでどちらもライブ録音(別日収録)。「田園」は各セクションが室内楽のように精細で瑞々しい響きを聴かせ、光り輝くような演奏に第1楽章からすっかり心を掴まれる。颯爽とした推進力と柔和さを持つノットの音楽作りには、躍動的な舞曲的要素が光り感動的だ。「田園」で期待値を高められた後に聴く第1番も格別で、まるで全奏者の音を見通しよく聴き出せるような鮮やかな演奏。物理メディアで持っておきたい録音作品だ。(飯田有抄)スペイン・バロック音楽はジョルディ・サヴァールらスペインの音楽家、日本ならメディオ・レジストロなどが積極的にその魅力を紹介してきた。ファミ・アルカイもその使徒。本盤は16~18世紀のフォリアやグローサ、ディフェレンシアなど変奏や装飾を主体とした楽曲で構成され、キテリア・ムニョスが歌う声楽曲も収録。ヴィオラ・ダ・ガンバを高度の技巧とパッションでエキサイティングに弾き、即興も自由自在。ジャズやロックのバンドのようにアンサンブルがグルーヴする。イベリアと彼らが支配した「新大陸」の音楽が混じり合い、宗教と世俗双方の熱情が競い合うように噴き上げてくる。(矢澤孝樹)ルノー・カピュソン(ヴァイオリン)ダニエル・ハーディング(指揮)スイス・ロマンド管弦楽団ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団シベリウス:ヴァイオリン協奏曲/バーバー:ヴァイオリン協奏曲ワーナーミュージック・ジャパンWPCS-13874 ¥3300(税込)イベール:アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲/旭井翔一:エクローグ/ピアソラ(三浦一馬編):孤独の歳月、レオノーラの愛のテーマ/J.ウィリアムズ:エスカペイド/ニーノ・ロータ(萩森英明/山中惇史編):『ゴッドファーザー』より/山田耕筰(山中編):赤とんぼ/山本菜摘:アンコール・ピース上野耕平(サクソフォン) 山中惇史(ピアノ) 三浦一馬(バンドネオン) 他イープラスミュージックem-0045 ¥3000(税込)ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、同第1番収録:2019年7月、ミューザ川崎シンフォニーホール&2023年11月、サントリーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00876 ¥3850(税込)アンリ・ド・バイイ:私は狂っている/アントニオ・デ・カベソン: 騎士の単旋歌によるディフェレンシア〔変奏曲〕/ファミ・アルカイ:スペインのフォリア/アロンソ・デ・ムダーラ(ブランチ編):クラロス伯爵によるグローサ〔旋律的装飾〕と即興 他ファミ・アルカイ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)アカデミア・デル・ピアチェーレ キテリア・ムニョス(ソプラノ)Challenge Classics/東京エムプラスXCC 720018 ¥3300(税込)SACDCDSACDCDeclogue/上野耕平シベリウス&バーバー:ヴァイオリン協奏曲集/ルノー・カピュソンベートーヴェン:交響曲第6番「田園」&第1番/ジョナサン・ノット&東響燃えるスペイン〜スペイン・バロック音楽の神と人間の情熱/ファミ・アルカイ

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