6/4(水)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 https://www.proarte.jp©藤本史昭76取材・文:井内美香文:飯田有抄 壮麗な音色と堅牢な構築力で聴き手を魅了するピアニスト、松岡淳。ブラームス国際音楽コンクールピアノ部門初の邦人優勝者で、国内外のオーケストラとの共演も重ねてきた実力派である。彼が2019年からスタートしたリサイタル「ピアノの交響楽」は、今年で5回目を迎える。“たった一人のシンフォニー”と銘打つだけに、毎回ベートーヴェン、リスト、ラヴェルらによる音楽的スケールの大きな作品を届けてきた。 今回もリスト「リゴレット・パラフレーズ」、ショパンの「幻想ポロネーズ」など華 スペイン歌曲のスペシャリスト谷めぐみ。その《帰国40周年リサイタル》が5月に開かれる。 「もう40年だなんて、自分が一番驚いています(笑)。私にとってスペイン歌曲は唯一無二の友のような存在。いつも傍らで私を励まし、時には松葉杖のように支えてくれました」 リサイタルは《祈り》《カタルーニャの抒情》《異郷の香り》《魅せられし国》の4部で構成される。 「まず《祈り》のステージを、と決めていました。様々な不安を覚えることが多い今、歌で祈りを捧げたい、と強く願う気持ちがあります。スペインの歌と出会い、歌曲として最初に魅せられた作品、トゥリーナ〈エスペランサの聖母に捧げる祈祷風のサエタ〉から始めます」 第1部は他に、ファリャ、アルバレスの作品。第2部は、谷の恩師であるピアニスト、作曲家マヌエル・ガルシア・モランテ編曲によるカタルーニャ民謡3曲で始まり、アルベニス、グラナドス、モンポウの作品と続く。 「アルベニス〈舟歌〉は、アルベニス生誕の町カンプロドンで開かれた演奏会で、ビクトリア・デ・ロス・アンヘレスがモランテ先生の伴奏で歌うのを聴いた、思い出の曲です。お許しを得てリハーサルから聴かせていただけたことは、やかな曲目が並ぶ。そして例年の注目プログラムであるリスト編曲のベートーヴェンの交響曲が今年も披露される。5作目に取り上げるのは交響曲第8番 ヘ長調。ベートーヴェンの全9作の交響曲の中では比較的コンパクトな作品だが、作曲家自身が大変気に入っていたことでも知られている。明るく颯爽とした曲想を生かしたリスト版を、松岡がどのような響きで聴かせてくれるのか楽しみだ。今考えると、夢のような経験でした」 グラナドスのロマンティシズムが凝縮された〈ちいさな歌〉はピアノも聴きどころだという。そしてよく知られたモンポウ〈君の上にはただ花ばかり〉。谷はこの曲を作曲家自身の前で歌ったことがある。 「モランテ先生がご自宅に連れていってくれたんです。歌い終えると、マエストロ・モンポウは微笑み、『とてもよかった』と言ってくださいました」 第3部は広くスペイン語圏の国々にも目を向けた。 「イラディエール〈ラ・パロマ〉、モンサルバッジェ〈ピアノの中のキューバ〉、どちらもヨーロッパとキューバ辺りを行き来したリズム、ハバネラが使われています。アルゼンチンの作曲家グアスタビーノの作品はロマンティックな魅力。ピアソラ〈忘却〉はオリジナルの映画音楽を尊重してヴォカリーズで。今回、初めて歌います」 そして最後は、もちろんスペイン色いっぱいのステージだ。 「お国ぶり豊かな作品を揃えました。オブラドルス〈エル・ビート〉は、お客様が大好きな一曲。グリディの作品ではカスティーリャのホタを。胸に沁みるラビージャ〈バスクの歌〉、そして〈アストゥリアスの歌〉で小粋に締めます」 谷が厚い信頼を寄せる名手、浦壁信二のピアノも楽しみだ。谷めぐみ 帰国40周年リサイタル スペイン歌曲浪漫5/10(土)14:00 Hakuju Hall問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 https://www.bflat-mp.com松岡 淳 ピアノリサイタル ピアノの交響楽 vol.5円熟味を増す名手が挑むベートーヴェンの小宇宙Interview谷 めぐみ(ソプラノ)40年の節目に、あふれる想いを込めて
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