第25回記念 別府アルゲリッチ音楽祭日本のトップ・アーティストたちとともに節目を祝うラファエラ・グロメス ©Wildundleise Deマルタ・アルゲリッチ ©池上直哉尾高忠明 ©読響75尾高忠明(指揮) 読売日本交響楽団文:鈴木淳史文:萩谷由喜子 読響と数々の名演を実現してきた名誉客演指揮者の尾高忠明。彼がもっとも得意とする英国音楽、そのなかでも自家薬籠中の逸品である、エルガーの「創作主題による変奏曲『エニグマ』」が演奏される。 メランコリックな主題と作曲家の友人たちを描いたという14の変奏曲からなる作品だ。それぞれの友人の名前は隠されていたが、現在はほぼ解明。性格によって各々の変奏が鮮やかに表現し分けられている。そして、主題に含まれない隠された主題はまだエニグマ(謎)のままだ。 尾高は、この名曲を過去に何度演奏したのだろうか。今回の読響との公演では、持ち前のパーフェクトなバランスで、カッチリとそれぞれの変奏を描いてくれるはず。このコンビによるシンフォニックな味わいは格別だ。 プログラム前半では、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を取り上げる。チェリ 日本から世界に向けて発信される国際音楽祭、別府アルゲリッチ音楽祭(総合プロデューサー:伊藤京子)が第25回を迎える。4月20日から7月13日の会期中に、別府6公演、大分2公演、東京2公演の計10公演が開催される。うち、マルタ・アルゲリッチの出演が予定されている演奏会を中心に紹介しよう。 5月21日は「祝祭の日」と題し、大分市のiichiko総合文化センターで25回記念特別公演が開催されるが、竹澤恭子、川本嘉子、池松宏、阪田知樹ら豪華共演陣とのシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」やサン=サーンス「動物の謝肉祭」が聴けるのが嬉しい。5月23日、別府・ビーコンプラザでの室内楽公演では、川久保賜紀、上野通明とのピアノ三重奏のほか、アルゲリッチはラヴェル「夜のガスパール」の第1曲〈オンディーヌ〉と「水の戯れ」を独奏する(5/28の東京も同内容)。5月14日の東京公演は、広上淳一指揮水戸室内管との共演による年に戦時下のウクライナを訪れてこの曲を演奏したことを契機に実現したというレコーディングだが、その気迫のこもった力強い演奏に、グロメスの鋭い感受性がうかがえた。このパッションが東京と横浜でも再現されるのか。読響も熱くそれに応えることを期待して。アルゲリッチの特別演奏会(5/26)も話題を呼びそうだ。第682回 名曲シリーズ 5/15(木)19:00 サントリーホール第141回 横浜マチネーシリーズ 5/17(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jpストは、ラファエラ・グロメス。1991年ミュンヘンに生まれた彼女は、今回が初の来日公演となる。 ソニー・クラシカルの専属アーティストとして、昨年はシレンコ指揮ウクライナ国立交響楽団との共演でドヴォルザークのチェロ協奏曲を録音。2023オーケストラ・コンサート。アルゲリッチはバルトークのピアノ協奏曲第3番を披露する。 さらに、長年の盟友、ミッシャ・マイスキーの追加出演の朗報も入ってきた。二人の顔合わせが楽しみだ。他にも、第12回浜松国際ピアノコンクールの優勝者、鈴木愛美のリサイタル(4/20)、大分県出身若手演奏家コンサート(5/10)、 N響奏者のカルテット(6/22)など魅惑の公演が揃っている。また、関連コンサートとして、歌舞伎の聖地・京都南座で予定されている4/20(日)~7/13(日) しいきアルゲリッチハウス、ビーコンプラザ、iichiko 総合文化センター、東京オペラシティ コンサートホール 他問 アルゲリッチ芸術振興財団0977-27-2299 https://argerich-mf.jp「エニグマ変奏曲」で体感する英国音楽の泰斗の真骨頂
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