©Bill Cooper大西宇宙 ©Marco Borggreve藤岡幸夫 ©青柳 聡戸澤哲夫安川みく ©CMR-Photography68文:林 昌英文:高橋森彦 創立50周年に入った東京シティ・フィルは、4月に元コンサートマスター大谷康子と再会の共演を果たすのに続き、6月には楽団の成長期から支え続けてきた現コンサートマスター戸澤哲夫がソリストとして登場する。戸澤は東京藝術大学大学院在籍時からこのポストに就任し、今年在任30周年を迎える。ひとつの楽団で30年以上同職を務めるのは偉業であり、その節目を祝う場に自ら望んだ作品はベートーヴェン。長く苦労と喜びを共有してきた楽団を背に、戸澤の美しい演奏姿と持ち前の美音で奏でられるヴァイオリン協奏曲の超名曲。感慨深い時間になるはず。 感動的な音楽は後半にも。ヴォーン・ウィリアムズ「我らに平和を与えたまえ」。1936年、世界が再び戦争の予感に包まれ始めた時期に作られた、ソプラノとバリトン独唱に合唱団も加わる大作。曲名のラテン語“Dona Nobis Pacem(ドナ・ノービス・パーチェム)”が イギリスが誇る二大バレエ団の一つ、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団が7年ぶりに来日する。ロンドンのロイヤル・バレエ団とは姉妹カンパニーであり、名門の誉れ高い。 フェニーチェ堺で上演する『眠れる森の美女』全3幕プロローグ付は、ペローの童話に基づく台本にチャイコフスキーが作曲したクラシック・バレエの最高峰。名匠ピーター・ライトの演出・振付は、ロシアを経て英国で磨き上げられた正統派で洗練されている。 何よりもドラマを大切にした演出で、善をつかさどる妖精リラの精を、初演当時のようにマイム(身ぶり手ぶり)で演じる役とするなど、演劇性が高い。むろん踊りも充実し、長い眠りから覚めたオーロラ姫が王子と踊るパ・ド・ドゥは英国版らしい甘美な名場面だ。美術・衣裳には深みと艶があり、ギャヴィン・サザーランドが指揮するザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団による生演奏も入幾度も現れ、平和を希求するメッセージが、美しくも真に迫る音楽で展開される。イギリス音楽を重要な柱として、この作曲家の名演を重ねてきた藤岡幸夫たっての希望による選曲で、彼と度々共演するソプラノ安川みく、バリトン大西宇宙という人気歌手が集い、温かくも清澄な声で深い思いを伝える。るので、総合芸術としての厚みを堪能できるだろう。 主演予定のダンサーにも注目。オーロラ姫のセリーヌ・ギッテンスは、繊細な腕づかいなどで優美な英国スタイルを体現する。フロリムンド王子のヤシエル・ホデリン・ベロは、キューバ国立バレエのプリンシパルを経て入団した気鋭であり、のびやかな踊りに期待したい。 なお、5月にはトークイベント「海外バレエカンパニーの魅力と秘密~英国と7/2(水)18:30 フェニーチェ堺問 フェニーチェ堺072-223-1000 https://www.fenice-sacay.jp東京シティ・フィル・コーアは、2月の藤岡指揮の伊福部昭「釈迦」で見事な合唱を聴かせたばかりで、続けて20世紀の対照的な傑作に挑む。本作のメッセージがますます必要となる今、ソプラノの“Pacem(平和)”が虚空に消えゆく結尾の余韻やいかに。大切な体験となる。ドイツの事例~」が行われ、山本康介、大石裕香とそれぞれ英国、ドイツのバレエ団で活躍してきた二人が欧州バレエの魅力や本番のみどころを紹介する。第379回 定期演奏会 6/6(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団コンマス・戸澤が在任30周年の思いをのせるベートーヴェン英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」イギリスを代表する名門が7年ぶりの来日で上演する不朽の名作
元のページ ../index.html#71