光岡暁恵 ©Flavio Gallozzi園田隆一郎 ©Fabio Parenzan63取材・文:室田尚子藤原歌劇団公演 Teatro OPERA Collectionグノー《ロメオとジュリエット》ニュープロダクション(全5幕/字幕付き原語(フランス語)上演)4/26(土)、4/27(日)各日14:00 テアトロ・ジーリオ・ショウワ問 日本オペラ振興会チケットセンター03-6721-0874 https://www.jof.or.jp※光岡暁恵は4月26日に出演。配役などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。旋律で高らかに愛を歌い上げたり、とかなり自由な感情の発露があります。オーケストレーションがとても厚い箇所もあり、私にとっては新しい響きをつくっていく喜びに満ちています」 これまで何度も共演を重ねてきた園田は、そんな光岡のチャレンジを「今だからこそ」と強く後押しする。園田「声や呼吸へのこだわりを強く持っていて、それを自分でしっかりと守って歌ってきた人。物語のクライマックスで激しい感情を表現するような場面でも、決して大げさにならず自然体なんです。そんな歌手としてまっすぐな光岡さんが、声の成熟を待ってようやくジュリエットに挑戦する。指揮者としては、ぜひ一緒に新しい表現をつくっていきたいと思います」 《ロメオとジュリエット》というオペラが「大好き」で「ずっと振りたいと思っていた」という園田。同じフランスのマスネがより感覚的で自由さを持っているのに対して、グノーの音楽には「いい意味で様式に則った上での美しさがある」という。そうしたところも、ベルカント・オペラで鍛えた光岡の表現に期待できると考えているようだ。一方の光岡も、「こちらが何も言わなくても、こう歌いたいというところをわかってくれる。歌手をあっけらかんといさせてくれるという、なかなかいない指揮者です」と絶大な信頼を寄せる。 ともにオペラの真髄を追求してきた二人が、新たなステージへ踏み出す《ロメオとジュリエット》は、私たち聴衆にとってもまた、極上のフランス・オペラを味わうことのできる貴重な機会となりそうだ。 藤原歌劇団が新しくスタートさせる〈Teatro OPERA Collection〉は、ステージ後方にオーケストラ、合唱を配置し、歌手は衣裳をつけて演じ歌う、オーケストラ一体型の新しいオペラ・シリーズだ。指揮の園田隆一郎は、舞台上のオーケストラと歌との音量のコントロールは難しいが、と前置きをしながら、このスタイルの利点について語ってくれた。園田「歌手の皆さんは指揮者が背中越しで見えにくいというリスクはありますが、逆に通常のピットよりも指揮者と歌手の距離が近くなるので、呼吸は感じやすいのではないでしょうか。またお客さまにとっては、歌がよりダイレクトに聴こえるというメリットがあります。指揮者としては、オペラにおけるオーケストラが単なる歌の伴奏ではなく、ドラマそのものを表現しているということを伝えられるスタイルだと思います」 さて、新シリーズの第1回に選ばれたのは、日本ではあまり上演機会のないグノーの《ロメオとジュリエット》だ。藤原歌劇団でも、2003年以来の上演。ジュリエットを歌う光岡暁恵は、これがロールデビューとなる。光岡「2003年の上演を観た時から憧れていた役です。実は7年前になりますが、園田さんが藤沢で開催しているシリーズ『オペラを100倍楽しむ方法』に出演した時、ジュリエットの有名なアリア〈私は夢に生きたい〉を歌いました。その時、園田さんと“いつか一緒に舞台でできたらいいね”と話していたんです。それがついに実現することになり、とてもワクワクしています」 光岡といえば、数々のベルカント・オペラで主役を歌ってきた、日本における「ベルカントの名手」だ。今回は19世紀後半のフランス・オペラという、これまでとは違うジャンルの作品に挑戦することになる。光岡「確かに、これまでに私がレパートリーとしてきたベルカント・オペラとは、音楽的に異なる要素をたくさん含んでいます。例えば、ベルカントでは愛の二重唱といってもある種の型が守られているのですが、グノーの場合は同じInterview光岡暁恵(ソプラノ) & 園田隆一郎(指揮) 二人のかねてからの想いがついにステージで花開く
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