左より:イスラエル・チェンバー・プロジェクト ©Yael Ilan/赤坂智子/小川響子 ©masatoshi yamashiro/上野星矢54文:矢澤孝樹[ I ] 6/19(木) [II] 6/21(土)各日19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)問 サントリーホールチケットセンター0570-55-0017 suntoryhall.pia.jp※プログラムの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。トハースなど錚々たる名手が登場しており、赤坂への信頼の高さが伺える。以下、インタビューからの引用もまじえつつ、ICPのグループ特性と今回の2度の演奏会のプログラム内容を紹介していこう。 ICPの音楽性について、彼女の言葉から伝わるものを総合するなら、徹底した議論から生み出される理知的な音楽づくりであり、一方でメンバーそれぞれの個性と自由が存分に生かされ、それが「創作料理」のようにプログラムに反映されてゆく、ということになろう。イスラエルのクラシック音楽家は比較的小さなコミュニティの中で密に交流しており、一方でニューヨークをもうひとつの拠点としているように、メンバーの国際的なネットワークがインターナショナル性としてアンサンブルに還元されてもいる。いわばローカル性とグローバリズムの絶妙なバランス。 赤坂によればメンバーのキーパーソンはハープのシヴァン・マゲンで、その強靭な音楽性もさることながら、ハープが入ることによるプログラムの多様性もポイントだ。 というわけでプログラムを見ていこう。演奏会I(6/19)はハイドン、ブルッフ、マルティヌー、シューマン、ブラームスと一見関連性が見えづらいが、赤坂曰く、東欧の風土と空気感の描出が隠れテーマのようだ。ユニークなのはやはりハープの活かし方で、ハイドンのピアノ三重奏曲、シューマンの「幻想小曲集」作品73(クラリネットとピアノ)のピアノ・パートはハープが演奏する。果たして楽曲像がいかに変貌するか、注目だ。もちろんマルティヌー(全員出演)やブラームスのピアノ四重奏曲第3番で、ICPのアンサンブルの実力は大いに発揮されよう。 演奏会II(6/21)の前半はドビュッシー、カプレ、そしてICPが必ずプログラムに入れる委嘱作品としてコーエン「蛍の哀歌」と、ハープが活躍。そして後半は注目のベートーヴェン「英雄」室内アンサンブル版だ。赤坂によると、各パート1人の演奏によってベートーヴェンの細かな指示がオーケストラ以上にラディカルに描出されるとのこと。そして戦争が相次ぐ現在、イスラエルと周辺を取り巻く深刻な現状に心を痛める音楽家たちが発する、「今こそ平和のための“英雄”が必要」というメッセージにも耳を傾けたい。 2011年以来、「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」(CMG)には国内外の多彩なアーティストが登場し、日本を代表する室内楽の祭典としての地位を揺るぎないものとしてきた。 2025年の「CMGプレミアム」には、初来日のイスラエル・チェンバー・プロジェクト(ICP)が登場する。ICPは2008年に結成。ニューヨークとイスラエルを拠点とし、弦楽器、管楽器、ハープ、ピアノという多彩な楽器を備えた室内楽グループだ。今回来日するのは、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、そしてクラリネットとハープと、異色のメンバー構成。 ICPは「CMGプレミアム」で2公演を行うが、「シーズンゲスト」としてヨーロッパの室内楽シーンで活躍するヴィオラの赤坂智子が参加する。さらに後述の演奏会IIでは葵トリオのヴァイオリニスト小川響子と、フルートの上野星矢も参加。かくして、2回の演奏会における9曲の編成がほとんど異なるという、驚くべきバラエティの豊かさが実現した。 今回の公演に先立ち、筆者は赤坂智子に話をきく機会を得た。赤坂はICPへは10年前からしばしば「シーズンゲスト」として参加している。「シーズンゲスト」はICPのツアーに同行して年10回ほどの演奏会に出演する、準レギュラー的な位置づけのようだ。タベア・ツィンマーマンやアンティエ・ヴァイサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2025CMGプレミアム イスラエル・チェンバー・プロジェクト唯一無二の編成で室内楽の地平を切り開く
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