ハインツ・ホリガー ©Priska Ketterer谷口知聡 ©ferranteferranti吉野直子 ©Akira Muto周防亮介 ©松尾淳一郎水野優也 ©Yuji Uenoトーマス・ヘル ©藤本史昭山根一仁 ©T.Tairadate53文:飯尾洋一文:柴田克彦 ハインツ・ホリガーほど非凡な音楽家もいない。指揮者、オーボエ奏者、作曲家と3つの顔を持ち、そのすべての領域で卓越した手腕を発揮する。そんなホリガーが新日本フィルの指揮台に帰ってくる。公演時には86歳となるホリガーだが、まだまだオーボエ奏者としても健在なところを披露してくれるのだから、驚嘆せずにはいられない。 今回のプログラムでは20世紀の東欧の音楽とメンデルスゾーンが組み合わされる。ルトスワフスキのオーボエとハープと室内管弦楽のための二重協奏曲、ヴェレシュの「ベラ・バルトークの思い出に捧げる哀歌」、ルトスワフスキの「葬送音楽 バルトークを偲んで」は、音楽家ホリガーの原点をたどる旅のような選曲だ。ルトスワフスキの二重協奏曲は1980年にホリガー夫妻のために書かれた作品。今回はホリガーと吉野直子がソロを務める。ハンガリーの作曲家ヴェレシュはホリガーにとって作曲の師。そして、ヴェレシュにとっての ドイツ出身の鬼才ピアニスト、トーマス・ヘルは、モダンな音楽にとりわけ造詣が深い。それは輝かしさと切れ味を併せ持つ音やシャープな感性が最大限に発揮されるからだ。2016年トッパンホールでのリゲティ「エチュード全曲」はその好例。同ホールでは18年と22年にも鮮烈な印象を与えている。 そこでトッパンホールは5月に「トーマス・ヘル プロジェクト」を開催する。初日は「リゲティ&バルトーク」。ヘルの看板たるリゲティ初期の傑作ピアノ曲「ムジカ・リチェルカータ」に、リゲティが敬愛したバルトークのヴァイオリン・ソナタ第2番および2台ピアノと打楽器のためのソナタが続く内容だ。ヴァイオリンは成師がバルトーク。ホリガーは師であるヴェレシュと、多くの作品で協働したルトスワフスキによる、ふたつのバルトークを偲ぶ作品を並べてみせた。 メンデルスゾーンの作品からは序曲「フィンガルの洞窟」と交響曲第4番「イ長顕著な山根一仁。2台ピアノの相方を、オルレアン国際ピアノコンクールで第2位を受賞後、欧州で演奏活動を展開する谷口知聡が務める。彼女は、当ホールでのマスタークラスでヘルと出会い、親交を重ねているというからパートナーにまさしく打ってつけだ。 2日目は「J.S.バッハ&ショスタコーヴィチ」。旧ソ連の大家のピアノ三重奏曲第2番と室内楽版の交響曲第15番を、美しく煌めくバッハのトッカータ ニ長調タリア」が演奏される。作曲者の天才性が存分に発揮された伸びやかな音楽が、前半のプログラムと好対照をなす。ロマン派音楽であっても、新たな目で作品を見つめ直すのがホリガー。フレッシュな体験になるのでは。が繋ぐプロである。ピアノ三重奏曲は20世紀屈指の名作だし、交響曲はオケとは異なる透明感や明晰さが魅力。こちらは、当ホールでの実績も光るヴァイオリンの周防亮介とチェロの水野優也が共演し、両日共に、竹原美歌、L.ニルソンといった打楽器の達人も出演する。 これは、ヘルの演奏も、彼に触発された俊才たちの化学反応も楽しみな、トッパンホール以外ではまず体験できない公演だ。第663回 定期演奏会〈サントリーホール・シリーズ〉 5/23(金)19:00 サントリーホール〈トリフォニーホール・シリーズ〉 5/24(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィルチケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jpI リゲティ&バルトーク 5/26(月)II J.S.バッハ&ショスタコーヴィチ 5/29(木)各日19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.comハインツ・ホリガー(指揮/オーボエ) 新日本フィルハーモニー交響楽団衰えを知らぬ驚異のレジェンドがふたたび降臨!トーマス・ヘル(ピアノ)プロジェクト 2025 I・II鬼才と俊才たちが魅せる刺激的な二夜
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