eぶらあぼ 2025.4月号
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©Hannes Caspar/Deutsche Grammophon51アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル ジョン・フィールド&ベートーヴェンエリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)取材・文:香原斗志文:長井進之介エリーナ・ガランチャ メゾソプラノ リサイタル20256/17(火)18:30 東京オペラシティ コンサートホール6/21(土)14:00、6/25(水)19:00 サントリーホール問 テイト・チケットセンター 03-6774-1968 https://www.tate.jp※プログラムは公演により異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。他公演6/19(木) 愛知県芸術劇場 コンサートホール(東海テレビ放送事業部052-954-1107)6/23(月) 大阪/ザ・シンフォニーホール(キョードーインフォメーション0570-200-888) 独創的なプログラミングと、その世界観を最大限に引き出す色彩豊かな演奏で世界中の聴衆を魅了しているピアニスト、アリス=紗良・オット。今回のリサイタルは、今彼女が熱意をもって取り組んでいるジョン・フィールドのノクターンを中心としたプログラムである。フィールドはノクターンの創始者であるということでしかその名を知られていないが、彼の作品はショパンが影響を受けたことを改めて納得させられる魅力的なものばかり。繊細かつドラマティックなフィールドの世界をこれほど多くの楽曲で味わえる機会は貴重といえるだろう。さらに今 2022年6月のコンサートでは、筆者は呼吸が乱れるほど感銘を受け、涙を何度も流した。すごいに決まっていたが、1曲1曲が心の奥にこうも入り込んで、揺さぶりをかけるとは想像しなかった。最初のブラームスの歌曲から言葉が沁み込み、《サムソンとデリラ》や《サバの女王》の制御され尽くした豊かなドラマ性には、ただ感服した。その後もラフマニノフの哀愁、サルスエラ(スペインの伝統的な歌劇)の闊達なリズムと変幻自在。どんな作品も似た雰囲気で歌う歌手とは対照的に、いずれもその曲らしく、かつガランチャらしいのである。世界最高峰であるのは当然として、それを超えた異次元の歌たちだった。 ガランチャの以下の言葉に秘密を解くカギがある。 「私は歌曲でもオペラ・アリアでも、歌に込められた感情、歌が表現している物語を聴き手に伝えることを第一に考えています。そのために徹底した練習を重ねた結果、ステージ上では体が勝手に動いてくれます。どういうテクニックを駆使して歌うか、などと考えず、その先の音楽的な表現に集中することができます」 もはや完璧な声がひとりでに出るので、味つけや感情表現に集中できるのだろう。しかも、そのテクニックは好不調も乗り越える水準にあるようだ。回はそこにベートーヴェンの「月光」や晩年の30番などのピアノ・ソナタも加わる。工夫を凝らしたプログラムを通して、同じ時代を生きた2人の作曲家の「遺産」の偉大さ、そしてのちの時代にまで影響を及ぼした楽曲の完成度の高さを改めて感じることができるはずだ。6/29(日)14:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp他公演 6/21(土) 宮城/東北大学百周年記念会館川内萩ホール(tbc事業部022-714-1022)6/26(木) 文京シビックホール(03-5803-1111)6/28(土) 兵庫県立芸術文化センター(キョードーインフォメーション0570-200-888)7/1(火) 愛知県芸術劇場 コンサートホール(クラシック名古屋052-678-5310) 「体調がすぐれない日。声がよく出ない日。問題をかかえている日もありますが、舞台裏で磨き上げてきたテクニックに頼ることで切り抜けられます」 加えて、最近のガランチャに感じるのは円熟である。光沢を帯びた絹のような声はそのままに、ていねいに熟成させたポテンシャルの高いワインのように、洗練された極上の深みが味わえる。それは次の言葉のように、努力の末に得られたものである。 「私は自分の“楽器”を深く理解したうえで、技術的に洗練させる努力を絶え間なく重ね、進化させてきました。その結果、“楽器”は次第に成熟し、私が歌いたいと望んでいたどんな役も演じることができるようになりました」 たとえば、2023年末にミラノ・スカラ座で聴いたヴェルディ《ドン・カルロ》のエボリ公女。エレガンスに強い感情を宿らせ、ただ力強いだけの表現の何倍も凄みを帯びた。 今回はピアノ伴奏(6/17)とオーケストラ伴奏(6/21,6/25)の2つのプログラムが用意されている。前者はラフマニノフの歌曲やサルスエラも楽しみだが、なによりガランチャの細やかな息遣いまで聴きとれるのがうれしい。後者は十八番のビゼー《カルメン》の聴きどころをたっぷり楽しめる。「日本のみなさんは知識が豊富で、ヨーロッパの音楽をよく理解し、パフォーマンスへの配慮が深く、いつも心が温まります」と語るガランチャ。気持ちよく歌ってもらえるなら、空前の水準は約束されたようなものだ。Interview“ノクターン”の生みの親と楽聖、偉大なる二人のコントラスト心震わせる至高の歌声を、ピアノ・オケ伴奏の二つの舞台で

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