eぶらあぼ 2025.4月号
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©www.lucasebck.com48ウィーン少年合唱団文:室田尚子ており、一つの組が年間に行う公演はおよそ80回というプロ集団でもある。 巨匠アルトゥーロ・トスカニーニが“天使の歌声”と称して以来、日本でもその愛称でよく知られている。初来日は1955年。当時はオーストリアから南回りの飛行機で3日もかけてやってきたのだそう。今年はそんなウィーン少年合唱団が初来日してから70年目の記念の年にあたる。日本でも、三世代にわたってウィーン少年合唱団を愛してきた、というファンも多い。そんな記念すべき節目の年に来日するのは、これが初来日となるカペルマイスターのマヌエル・フーバー率いるモーツァルト組。千葉を皮切りに、東京・滋賀・静岡・福岡・山口・埼玉・大阪・神奈川・愛知・兵庫・山梨・茨城で全21公演が予定されている。 プログラムは2種類。「ぼくたちの地球 そして未来へ」と銘打ったプログラムAは、ヨルダン・日本・オーストリア・カ5/3(土・祝)、5/6(火・休)、5/29(木)、6/10(火)、6/13(金)、6/14(土)、6/15(日)各日13:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp/special/wsk/※プログラムは公演により異なります。全国ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。ナダなどの民謡や伝承歌からメンデルスゾーン、フンパーディンク、ブリテンなどの作品、また『千と千尋の神隠し』やディズニー映画からのナンバーなど、母なる地球に生きるものたちに捧げる歌や、未来へと伝えたい名曲が盛りだくさんの内容だ。そしてプログラムBは、今年生誕200年のヨハン・シュトラウスII世を記念した「シュトラウス・フォー・エバー!」と題するプログラムで、シュトラウスII世の作品や彼にちなんだ様々な作品が並ぶ。「アンネン・ポルカ」やワルツ「春の声」「皇帝円舞曲」などのよく知られたワルツやポルカはもちろんのこと、父ヨハンや弟ヨーゼフの作品やベートーヴェンの「歓喜の歌」、ヘンデルの「メサイア」を編曲した楽しいナンバーも披露される予定。日本のファンのために、両プログラム共に「ふるさと」や「美しく青きドナウ」といった定番曲が入っているのも嬉しい。 ウィーン少年合唱団は、525年以上の歴史を誇る世界でもっとも有名な少年合唱団だ。創設は1498年、神聖ローマ帝国の皇帝マクシミリアンI世が、宮廷礼拝堂で歌うための少年聖歌隊を集めたことに始まる。1924年に「ウィーン少年合唱団」として正式に発足。シューベルトが少年合唱団員だったことはよく知られているが、他にも、ハイドンは聖シュテファン教会聖歌隊員として少年聖歌隊とたびたび共演しているし、ブルックナーは歌唱指導者を務めていたこともあり、まさにウィーンのクラシック音楽の歴史とは切っても切れない存在といえる。また、2017年にはユネスコの無形文化遺産にも登録された。 現在のウィーン少年合唱団の団員は9歳から14歳まで、約100人。アウガルテン宮殿で共同生活を営みながら、「モーツァルト」「シューベルト」「ハイドン」「ブルックナー」という団ゆかりの作曲家の名前を持つ4つの組に分かれ、教会やオペラ劇場、またコンサートなどで常に技術を磨き続けている。4つの組のうちの一つが、常に演奏旅行に出かけ初来日から70年! 世代を超えて受け継がれる“天使の歌声”

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