eぶらあぼ 2025.4月号
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©Deutsche Fotothek 「20世紀ソヴィエトを代表する大作曲家、ドミートリー・ショスタコーヴィチ(1906〜1975)」 筆者はショスタコーヴィチについて書くときはだいたい、このような一文から始めます。 しばらく前までは、「少年時代から才能を発揮した天才だったが、スターリン以降のソヴィエト当局の批判や圧力に翻弄された作曲家…」「しかし、表面的にはわかりやすい楽曲を作って当局に従っているように見せながら、批判的な裏のメッセージを巧みに込めるという二重言語を駆使して、体制の矛盾や理不尽さを音楽で告発してきた…」といった説明もセットになっていたと思います。42 こういう認識は、裏を返せば、ソヴィエト連邦のことを知らなければ、そしてソ連時代の演奏を知らなければショスタコーヴィチは理解できない、という考え方にもつながります。「ショスタコは苦手で…」という人が多かったのも、独特の音楽語法と併せて、そういった思考が苦手意識を生んできたのかもしれません。 実際、20世紀中は実演で聴ける機会が限られていましたが、21世紀に入ってから、2006年の生誕100年のアニバーサリーも経て、ショスタコーヴィチがコンサートで取り上げられる機会は飛躍的に増加しました。そして没後50年の2025年、いまや国内オーケストラの定期演奏会で、ショスタコーヴィチの作品が存在しないシーズンは考えられません。愛好する聴衆の層が拡大するにつれて、この作曲家にのショスタコーヴィチは“ムズカシイ”?――そんなことはありません!!2025年、没後50年を迎える20世紀ソヴィエトの作曲家、ショスタコーヴィチ。彼がおかれていた社会背景ゆえに難解なイメージが付きまとい、“食わず嫌い”されている方も多いかもしれません。ぶらあぼONLINEでは、そんなショスタコーヴィチ作品の楽しみ方をわかりやすく紹介する「トリセツ」を好評公開中! 今回は、月刊ぶらあぼ読者の皆さまにもその一部をお届けします。文:林 昌英没後50年特集

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