拡大版はぶらあぼONLINEで!→中村美結さん2024年12月のマーチングバンド全国大会より41際にはメロフォンを吹いている。「中学まではバスケ部でキャプテンでした。音楽の経験はまったくなかったのですが、大分商業に入って吹奏楽部の全国大会の動画を見たとき、『カッコいい!私もこのメンバーになれたら……』と思ったんです」 大分商業は経験者のほうが少ないと聞き、美結は思いきって吹奏楽部に飛び込んだ。それからは「想像もしていなかった高校生活」が待っていた。「未経験なのにフレンチホルンとメロフォンという2つの楽器を演奏しなければならないのが大変でした。運指も、マウスピースの形状も全然違うので。マーチングも、見ているだけだと自分にもできそうと思ってしまうんですけど、実際にやってみると演奏しながら動く難しさに直面して……。ただ、運動部出身なので体力的には大丈夫でした」 上野先生のもとで練習を続け、3年間マーチングバンド全国大会に出場することができた。 今年度は、指揮者の上野先生を含めて81名。大中小と3カテゴリに分かれた大会の中ではギリギリ大編成の人数となる。大編成は120人を超える団体もあり、もっとも厳しいカテゴリだが、美結たち部員は「ずっと大編成に出るのが憧れだった」と先生に頼み込み、大編成出場が決まった。 ショー(マーチングの演奏・演技)のテーマは「阿修羅 ASURA -人外魔境呪術決戦-」。白の呪術師「陽」と黒の呪術師「陰」の戦いを描くドラマで、アニメ好きを公言する上野先生の発案によるもの。タイトルから察せられるとおり、アニメ『呪術廻戦』に着想を得ている。 12月15日、さいたまスーパーアリーナで開催された全国大会で、上野先生の指揮のもと、美結たちはマーチングで陰陽の決戦を描きだした。♪♪♪「上野先生がずっと笑顔で、パワーみなぎる指揮をしていたのが印象的でした。たぶん先生がいちばん楽しんでいたと思います。やっぱり先生は『ライブの人』なんだなって思いました」 美結が「ここに込める思いはほかのどの団体にも負けないつもりでやりました」という終盤のカンパニーフロント(横一直線になってゆっくり前進しながら演奏するマーチング最大の見せ場)では大いに会場を沸かせ、涙を流す観客もいた。 審査結果は銅賞だった。美結は言う。「金賞を目指していたので、やっぱり全国大会のレベルは高いなと思いました。でも、点数は去年より高く、大分商業の過去最高点。やってきたことは間違いじゃなかったと思えました」 1月に美結たちは引退した。上野先生は来年度も外部指導員という立場で大分商業の指導を続けることが決まっている。美結は言う。「青春は終わってから気づくものかもしれませんが、後輩たちには自分たちを信じて楽しく活動し、後悔のない青春を過ごしてほしいです」 公立校ゆえの大変さはある。それでも、大分商業の「青春の行進」はこれからも続いていく。
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