近現代ニッポン音楽の歩みを聴く5/8(木)18:30 日本製鉄紀尾井ホール□ 紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jphttps://kioihall.jp【シリーズ今後の予定】光 - HIKARI -10/12(日)14:00 石川県立音楽堂 邦楽ホール紀尾井午後の音楽会10/25(土)14:00 和歌山城ホール(小)Japan Classic ~三味線ゆかりの地、堺できく和楽器と西洋楽器の融合~10/26(日)14:00 フェニーチェ堺(小)※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。ホールの特徴を活かした和と洋のコラボシリーズ始動左より:紀尾井ホール室内管弦楽団 ©武藤 章/阪 哲朗 ©Florian Hammerich/杵屋勝十朗/安藤政輝/野村峰山文:池田卓夫 日本製鉄文化財団が運営する東京の音楽ホール「紀尾井ホール」は、今年4月の開館30周年を機に「日本製鉄紀尾井ホール」と改名する。開館時からクラシック室内楽用のホール(800席)と邦楽に適した小ホール(250席)を擁してそれぞれにユニークな公演を組むほか、クラシックと邦楽のジャンルを超えた企画も行ってきた。今回、さらにその連携を発展させる新しいシリーズ「響き合う和と洋」を立ち上げ、5月8日に紀尾井ホール室内管弦楽団(阪哲朗指揮)と和楽器奏者初のコラボレーション、「近現代ニッポン音楽の歩みを聴く」が催される。 《第一部 ニッポン音楽へ》では、明治維新(1868)以降、日本の伝統音楽が西洋音楽を取り入れ、実験的な作品や新たな楽器を生んだ流れを、尺八(中尾都山「春の光」(1907))、大和楽(「田植」(1937))、オークラウロ(中能島欣一「千鳥の曲を主題とせる三絃曲」(1938))と、第二次世界大戦後に生まれた太棹三味線(杵屋正邦「太棹のためのコンポジション第一章」(1967))の作品でたどる。 《第二部 和楽器とオーケストラ》では阪指揮の紀尾井ホール室内管が加わり、三味線、箏、尺八と共演。町田嘉章「三味線協奏曲第1番」(1927)で杵屋勝十朗、宮城道雄「越天楽変奏曲~箏と管弦楽の協奏曲」(1928)で安藤政輝、廣瀬量平「尺八とオーケストラのための協奏曲」(1976)で野村峰山が、それぞれソロをつとめる。とりわけ町田の「三味線協奏曲第1番」は宮城の「越天楽変奏曲」より1年早く作曲され、和楽器とオーケストラの協奏曲「第1号」の記録を塗り替える可能性がありながら、楽譜が現存しないため長く埋もれてきた。 町田は「第2番」も作曲したが、現在では彼自身が新交響楽団(NHK交響楽団の前身)と演奏した「第1番」全曲、四代目杵屋佐吉が日本ビクター管弦楽団と36録音した「第1&第2番」それぞれの第3楽章ロンドのSP盤だけが残り、ローム ミュージック ファンデーションがCDに復刻している。日本製鉄紀尾井ホールは、四代目の孫に当たる七代目杵屋佐吉から情報を得て「第1番」の復元を決め、作編曲家の萩森英明(1981年生まれ)に音源からの採譜とスコア復元を委嘱した。 萩森は大谷康子(ヴァイオリン)、春風亭小朝(落語家)がパーソナリティを務めるBSテレビ東京の番組『おんがく交差点』の編曲でも知られ、「1本の太い旋律の流れ」を重視する作曲家。「当日の紀尾井ホール室内管は最大50人。基本は復元なので、とにかく遺された音源から出発して、三味線のソロとオーケストラが渡り合えるように、コンサート向けの工夫を施していきます」と、作業のポイントを語る。 シリーズ「響き合う和と洋」は民族音楽学が専門で同ホール邦楽専門委員を務める音楽学者、徳丸吉彦の監修のもと、10月以降も曲目や演奏者の顔ぶれを変えながら、石川、和歌山、堺ほか全国のホールを巡演する計画。クラシックと邦楽の第一線で活躍する演奏家たちのジャンルを超えた共演により、互いに触発しあいながら生みだす音楽の大きな魅力を聴かせてくれることだろう。響き合う和と洋 和楽器と紀尾井ホール室内管弦楽団
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