126J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲集 第1集(テオルボ編)/今村泰典フランソワ・クープラン:クラヴサン曲全集6/中野振一郎中村ゆかり&ブルーノ・カニーノ デュオ・リサイタル2024ベートーヴェン:交響曲第7番・第6番「田園」/高関健&富士山静岡交響楽団中野振一郎が取り組んできたクープランのクラヴサン曲全集が最終巻を迎える。クラヴサン曲集で最初に書かれた第1オルドルと最後の第27オルドルを中心に収められたこの第6巻は、新旧の作風によるコントラストをくっきりと印象づける構成だ。ウェットな質感ながら、かっちりと弾いていく中野。曲が進むにつれ熱を帯びて、第1オルドルの最後のほうになるとテンポの変化も際立ち、まるでライブに接しているような興を味わうことができる。最後に書かれたオルドルは、曲数も4曲だけだが、ロココと情感が重なり合った力作ばかり。愛おしむかのようなその演奏からは、濃厚なニュアンスも湯気立つ。(鈴木淳史)16歳でフランスに渡り、長くヨーロッパで活動を続けている中村と、録音当時88歳の巨匠カニーノによる最新盤。二人は2004年からデュオ活動を行っており、24年8月に東京で結成20周年記念公演を行った。本作はそのライブ録音で、演奏された4曲中3曲が収録されている。中村のヴァイオリンは終始艶やかで濃厚。それを大ベテランのピアノが支えあるいは引き立てながら、雄弁で風格のある音楽を形作っている。中でもモーツァルトの第2楽章のピアノによる変奏はまるで1つの独奏曲のようだ。全体に濃密なロマンティシズムと格調の高さが共存したソナタ集。(柴田克彦)富士山静岡交響楽団が日本オーケストラ連盟正会員となって初のCDは、首席指揮者の高関健によるベートーヴェン。交響曲第7番は、序奏から美しく彫琢される。主部の前進駆動は素晴らしく、若々しいエネルギーが漲っている。第2楽章の変奏のオブリガートがきれいで、中間部の木管の音色や、精緻なフガートが楽しめる。躍動感のあるスケルツォも、熱く高揚する終曲もとてもいい。「田園」は弦の透明な響きが清潔。緩徐楽章は弦の柔らかさと木管が溶け合って、とても美しい。高関はフレージングとアーティキュレーションに独特の工夫があって、新鮮に聴ける箇所も多い。野卑な舞曲と嵐を経て、感謝の終曲がまたきれい。(横原千史)バッハの「無伴奏チェロ組曲」はフルート、リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバ、サクソフォンなどさまざまな楽器に編曲される。しかし一番「必然性」を感じさせるのは鍵盤楽器や撥弦楽器への編曲だろう。低音弦楽器がひとりで旋律も和声も表現することがこの曲の命題のひとつであり、ならば「書かれざる音」を実体化するにふさわしいのはこれらの楽器だ。バッハ自身、第5番をリュート用に編曲したが、名手・今村泰典は低い音域のテオルボを選んだ。厚みのある低音はチェロを思わせるし、必然性のある音を加えた編曲は演奏の説得力もあってもはやオリジナル作品の趣。ぜひ残りの3曲も。(矢澤孝樹)中野振一郎(チェンバロ)中村ゆかり(ヴァイオリン)ブルーノ・カニーノ(ピアノ)高関健(指揮)富士山静岡交響楽団今村泰典(テオルボ)J.S.バッハ(今村泰典編):無伴奏チェロ組曲第1番、同第5番、同第4番フランソワ・クープラン:クラヴサン曲集第1巻 第1オルドル ト調、同第4巻 第27オルドル ロ短調、クラヴサン奏法、ディアーヌ(初期稿)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9067 ¥3080(税込)モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第27番/ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ/フランク:ヴァイオリン・ソナタ収録:2024年8月、Hakuju Hall(ライブ)ナミ・レコードWWCC-8027 ¥3300(税込)ベートーヴェン:交響曲第7番、同第6番「田園」フォンテックFOCD9918 ¥3300(税込)ナクソス・ジャパンNYCX-10511 ¥2530(税込)CDCDCDCD
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