124ラヴェル:ピアノ協奏曲全集/チョ・ソンジンシューマン:ヴァイオリン・ソナタ全3曲 他/髙旗健次水の反映/百采池辺晋一郎:交響曲第11番「影を深くする忘却」 他生誕150年のラヴェルのピアノ・ソロ作品全集を、今年1月にリリースしたチョ・ソンジン。それに続いて同作曲家のピアノ協奏曲2作を収めたアルバムも発表した。共演はネルソンス指揮ボストン交響楽団である。協奏曲ト長調では、音色と強弱のレンジの広さを存分に聴かせ、ラヴェルらしい無機質さをウィットに富んだ都会的センスで伝える。第1・3楽章では安定したテンポに独特の抑制美を滲ませ、第2楽章では木管楽器との精密なアンサンブルが実に美しい。左手のための協奏曲では、端正な響きから、豪快なダイナミズムまで広がりのある音楽作りで魅了する。(飯田有抄)ドイツに長く滞在し、現在は広島を拠点とする髙旗健次によるシューマン・アルバム。2022年のイザイ録音でも硬派な演奏スタイルと感じたが、当盤もその土台は変わらない。その姿勢こそが、「愛」「ファンタジー」等のワードが前面に出る夢見心地な作曲家像ではなく、堅固なロジックで緻密に作品を構築する、いわば「ドイツ人シューマン」を強く実感させてくれる。もちろん堅苦しいという意味ではなく、安易に美麗な表現に流されずに、各フレーズの意味を追究することで、かえって自ずと音楽が動き、情緒が豊かになる。作品の力を信じるスタンスで、シューマンの深奥に。 (林 昌英)ユーフォニアムの新たな地平を目指す意欲的な奏者が、ピアニストと結成した鮮烈なデュオのデビュー・アルバム。原曲の持つ世界を優雅に拡げていくエルガーやフォーレ、ドビュッシーなどお馴染みの名曲たちも素敵だが、日本でこの楽器により演奏されていた最古のレパートリーの1つと言われるW.G.ジョーンズの「シーリア」や、精彩を放つ向井響への委嘱作品「水の反映II」にも心を掴まれる。圧巻はヴァイオリンを加えて奏でる、ブラームスが32歳で書いたホルン・トリオのユーフォニアム版。4つの楽章を通して、それぞれの楽器に託された旋律のアンサンブルがドラマを生む。(東端哲也)2023年に行われた作曲家・池辺晋一郎80歳バースデー・コンサートのライブ録音を中心としたアルバム。新旧の池辺作品を互い違いに並べる。1970年の図形楽譜の相聞I&IIと、2005年の五線譜による相聞IIIという、同趣向による無伴奏合唱曲の比較が秀逸(図形楽譜による演奏のほとばしるような生命力!)。交響曲第11番は、例によって中心を失って右往左往するものの、それでも親しみやすさを失わないのが池辺流だ。藝大卒業作品のピアノ協奏曲Iは、バースデー・コンサートのライブ録音ではなく、初演時の学生たちによる演奏を収録。若々しく、当時の空気感もつぶさに伝わってくる。(鈴木淳史)チョ・ソンジン(ピアノ)アンドリス・ネルソンス(指揮)ボストン交響楽団髙旗健次(ヴァイオリン)多賀谷祐輔 河内仁志(以上ピアノ)ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調、左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調ユニバーサル ミュージックUCCG-45115 ¥3300(税込)シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番〜第3番、幻想小曲集、3つのロマンス/ディートリッヒ/シューマン/ブラームス:F.A.E.ソナタコジマ録音ALM-9277,9278(2枚組) ¥4180(税込)エルガー:朝の歌/フォーレ:シシリエンヌ/W.G.ジョーンズ(大野真理子、深石宗太郎編):シーリア/向井響:ユーフォニアムとピアノのための「水の反映II」/ドビュッシー:美しい夕暮れ/ブラームス:ホルン三重奏曲(ユーフォニアム版) 他百采【佐藤采香(ユーフォニアム) 鐵百合奈(ピアノ)】石原悠企(ヴァイオリン)妙音舎MYCL-00057 ¥3740(税込)池辺晋一郎:相聞I〜III、オペラ《高野聖》より〈夫婦滝〉〈白桃の花〉、交響曲第11番「影を深くする忘却」、ピアノ協奏曲I 他東京混声合唱団 上原興隆(ピアノ) 広上淳一 佐藤功太郎(以上指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢 学生有志オーケストラ 他収録:2023年9月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ)他カメラータ・トウキョウCMCD-99089〜90(2枚組) ¥3850(税込)CDCDSACDCD
元のページ ../index.html#127