122Reverberate/児玉隼人モーツァルト:交響曲第39番、第40番、第41番「ジュピター」/上岡敏之&新日本フィル田中範康作品集IIIモーツァルト ピアノ協奏曲集 Vol.2/デヤン・ラジッチこれは、デビュー・アルバムにして「神童の卒業アルバム」だ。日本管打楽器コンクールで史上最年少優勝を果たし話題を呼ぶ15歳のトランペッター、児玉隼人。幼少期からの想い入れの強い作品を選んだとのことだが、冒頭のヘンデル「調子の良い鍛冶屋」から澄んだ音と滑らかなフレージングに魅了されてしまう。もうまったく大人の音楽だ。ヘーネ、ボザ、ベーメ、トマジと高度な技巧を要する曲が続くが、技術的達成はもう前提で、細やかな表情の変化や、技巧の合間から広々とした青空のように放たれるロング・トーンが聴き手をとらえて離さない。早くも、音楽家としての次のステージに期待が高まる。(矢澤孝樹)昨年10月の上岡敏之と新日本フィル公演が早くもCD化。幸いこの場に居合わせられたが、同コンビとしてばかりか、近年のモーツァルト演奏全般の中でも出色のものだった。この録音でも全編にわたる細密なニュアンス、その積み重ねが生み出す雄渾な響きがしっかり聴きとれる。アーティキュレーションは細部まで徹底的に洗い直され、内声部の動きを巧みに聴かせて、各セクションが鮮明に浮かび上がる立体感も抜群。ときに見せるユニークなバランスも楽しく、発見と喜びがあふれる。特に各曲の両端楽章の鮮烈な構築のインパクトは大きく、拍手と歓声が会場の興奮を伝える。(林 昌英)独奏曲からトリオまで多彩な編成の7曲。楽器の特性を生かしつつ、楽曲ごとの課題に対する回答がアイディア豊かに展開される。「Sparkling in the Space IV」はソプラノをエレクトロニクスが妖艶に増幅するのに対し、同「X」ではエレクトロニクスは鋭い器楽の応答に静かに奥行を与える。「無言歌」はフルートとギターが緊張感に満ちた対峙を、「同化の試み 第2番」ではギターと十三絃箏という東西の楽器が意外なブレンドをみせ、「ラメンテーション」ではぽつりぽつりと打ち出されたピアノの単音が慟哭を縁どる。曲によって切り込み方は様々だが、ベースには一貫して古典的な造形感覚があるように感じた。(江藤光紀)デヤン・ラジッチはクロアチア出身のコンポーザー=ピアニスト。モーツァルトをはじめとする古典派やショパン、ラヴェルなどの演奏を得意とする。本盤には現在オランダで最も存在感の強い指揮者のひとりであるヤン・ヴィレム・デ・フリーントが牽引するベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団と共に、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番と第9番「ジュノム」、ロンド(K.382)を収録。音色の美しさをはじめ、旋律の魅力的な歌いまわし、さらに即興性を感じさせる演奏によって、モーツァルトの音楽のみずみずしさが際立ったものとなっている。ラジッチ自作による華麗なカデンツァにも注目だ。(長井進之介)児玉隼人(トランペット) 新居由佳梨(ピアノ)上岡敏之(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団デヤン・ラジッチ(ピアノ)ヤン・ヴィレム・デ・フリーント(指揮)ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団Challenge Classics/東京エムプラスXCC 72946 ¥3300(税込)ヘンデル:調子の良い鍛冶屋/クラーク:霧の乙女/ヘーネ:スラヴ幻想曲/ボザ:ルスティーク/ベーメ:トランペット協奏曲/グラズノフ:アルバムブラット/トマジ:トランペット協奏曲/石川亮太:トランペットラブレターイープラスミュージックEM-0044 ¥3000(税込)モーツァルト:交響曲第39番、同第40番、同第41番「ジュピター」収録:2024年10月、すみだトリフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00872 ¥3850(税込)田中範康:無言歌、Sparkling in the Space IV「祈りの時」、同化の試み 第2番、Sparkling in the Space X、ピアノのためのモノローグ第4番「ラメンテーション」 他木ノ脇道元(フルート) 佐藤紀雄(ギター) 森川栄子(ソプラノ) 原田裕貴(エレクトロニクス) 木村麻耶(十三絃) 松山元(ピアノ) 他コジマ録音ALM-136 ¥3300(税込)モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番、同第9番「ジュノム」、ピアノとオーケストラのためのロンド K.382CDSACDCDCD
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