120ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス 他/サカリ・オラモ&東響ベートーヴェン:ソナタ第5番「春」 他/木越洋&鈴木慎崇ノルディック・ヴィジョンズ―フィンランドのピアノ音楽―/高橋絵里子ストラヴィンスキー:歌劇《ナイチンゲール》/フランソワ=グザヴィエ・ロト&レ・シエクルフィンランドの指揮者サカリ・オラモが昨年、東京交響楽団と初共演した際のライブ盤。母国の知られざる名作をフィーチャーした選曲がいい。ラウタヴァーラ「カントゥス・アルクティクス」では、録音された北方の鳥たちの鳴き声の中をオーケストラがゆったりと進み、恍惚とした情景が出現する。シベリウス「ルオンノタル」は700年もの間、海を漂う大気の精の嘆きを、ソプラノのアヌ・コムシがポルタメントを効かせた妖しい歌唱で表現。東響の緻密で透き通ったサウンドも北欧の空気感をうまく伝えている。ドヴォルザークの交響曲第8番はきりっとバランスよい解釈で、オラモの熟練ぶりを実感。(江藤光紀)木越洋はN響のチェロ首席を33年間務め、オケの顔でもあった。今回のアルバムは、チェロ以外の楽器が原曲の作品を集めたもの。ベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」はヴァイオリンの曲だが、チェロで出来るとは思わなかった。木越自身による編曲は、予想を遥かに上回る。まず細かい音が滑らかに演奏されるのに驚かされる。新たなチェロ・ソナタとして通用しそう。またチェロが低い分、ピアノの高音が一層煌めき、鈴木慎崇の走句の美しさが際立つ。ラヴェル「マ・メール・ロワ」のチェロ版も味がある。〈パゴダの女王〉中間部は低音の対話が独特。ドビュッシー「シランクス」の和風味付けも面白い。(横原千史)優しく、深く、爽やかに――そんな響きで惹きつけるのは、近現代音楽の語法に精通するピアニスト高橋絵里子がフィンランド音楽を集めたアルバムだ。若き日のコッコネンが残した愛らしく瑞々しい「ピエラヴェシ組曲」、シベリウスの弟子であったマデトヤの静謐な死生観を伝える「死の庭園」、日本文化の影響も受けているというロンパネンの「エラキス」(世界初録音)などを通じ、20世紀から現代に至るフィンランドのピアノ曲の諸相を描き出す。透明感がありつつも温かみのある高橋の音色は、洗練の極み。作品それぞれの持ち味を精緻に伝える。何度も聴き返したい一枚だ。(飯田有抄)ストラヴィンスキーが三大バレエと同時期に書いた小オペラのライブ録音。まずは外題役のドゥヴィエルの歌が素晴らしい。彼女は美麗な声で官能的に歌い、見事な高音がとりわけ効果を発揮。どの場面も惚れ惚れさせられる。特に第2幕の〈ナイチンゲールの歌〉は聴きものだ。漁夫役のデュボワの繊細で滑らかな歌声も特筆されるし、歌手陣は端役まで全員が美しい。ロトが紡ぐデリケートな管弦楽は第1幕導入部から終始耳を惹きつけ、合唱も的確な歌声を披露。あまり顧みられないオペラだが、鮮やかで瑞々しい当録音は改めて作品の意味や妙味に気付かせてくれる。(柴田克彦)ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス(鳥とオーケストラのための協奏曲)/シベリウス:交響詩「ルオンノタル」/ドヴォルザーク:交響曲第8番サカリ・オラモ(指揮)東京交響楽団アヌ・コムシ(ソプラノ)収録:2024年4月、サントリーホール&ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00870 ¥3850(税込)ベートーヴェン(木越洋編):ソナタ第5番「春」/ラヴェル(M.フィッシュ編):マ・メール・ロワ/ドビュッシー(木越編):シランクス(パンの笛)マイスター・ミュージックMM-4539 ¥3520(税込)ヨーナス・コッコネン:ピエラヴェシ組曲/レーヴィ・マデトヤ:死の庭園/カイ・ニエミネン:華やかな翼の微笑み/アリ・ロンパネン:エラキス、アルマクの砂場/セリム・パルムグレン:3つの情景による夜想曲コジマ録音ALM-145 ¥3300(税込)ストラヴィンスキー:歌劇《ナイチンゲール》収録:2023年3月、パリ(ライブ)ERATO/ワーナーミュージック・ジャパン5419.762404 ¥オープン価格木越洋(チェロ)鈴木慎崇(ピアノ)高橋絵里子(ピアノ)フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)レ・シエクルサビーヌ・ドゥヴィエル(ソプラノ) シリル・デュボワ(テノール) 他SACDCDCDCD
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