笠川 恵 ©Miyuki Miyamoto2019年の公演より ©石田昌隆ジョセフ・ウォルフ第166回 定期演奏会「In Flower」 3/15(土)15:00 神戸文化ホール問 神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349 https://www.kobe-bunka.jp/hall/61ジョセフ・ウォルフ(指揮) 神戸市室内管弦楽団ソリストにアンサンブル・モデルンのヴィオラ奏者 笠川恵が登場ジョヴァンニ・ソッリマ & エンリコ・メロッツィ100チェロ・コンサート「チェロよ、歌え!」イタリアの鬼才チェリストによる超絶プロジェクトが大阪・堺に初上陸文:飯尾洋一文:江藤光紀 神戸市室内管弦楽団の3月定期は、英国の指揮者ジョセフ・ウォルフがお国にちなんだプログラムを聴かせてくれる。 弦楽四重奏と弦楽合奏が協奏するエルガー「序奏とアレグロ」に続き、ヴィオラの笠川恵がイギリスの作曲家サリー・ビーミッシュの独奏曲「グランツ(輝き)」を演奏する。笠川はフランクフルトを拠点とする現代音楽団体アンサンブル・モデルンの奏者をはじめとして国際的に活躍している。自身もヴィオラを弾くビーミッシュの作品は、楽器の音域を生かした息の長い哀歌だ。 続いて笠川のソロに神戸市混声合唱団も加わり、ヴォーン・ウィリアムズの組曲「野の花」が演奏される。これは聖書の雅歌のイメージに基づく6つの楽章からなる作品で、オーボエと独奏ヴィオラが呼応して幻想的に始まり、合唱は終始ヴォカリーズ(母音唱法)で天界のような美しさを描きだす。知られざる名作だ。 ジョヴァンニ・ソッリマの「100チェロ」がフェニーチェ堺にやってくる。「100チェロ」とはその名の通り、100人ものチェリストが舞台上に集結するという他に例のないプロジェクト。プロ、アマ、国籍、ジャンル、年齢などの一切を問わずに集まった奏者たちが、音楽でひとつになる場として始まった。チェリストとして卓越した演奏を聴かせるソッリマだが、彼は単なる演奏者ではない。人々にインスピレーションを与える稀有な音楽家なのだ。 「100チェロ」のアイディアが生まれたのは2012年、ローマにて。18世紀に建てられた由緒あるヴァッレ劇場が閉鎖されることに反対して、劇場を守るべくソッリマは友人のチェリスト、エンリコ・メロッツィとともにこのプロジェクトを立ち上げた。ヴァッレ劇場にはヨーロッパ各地から多くのアーティストが集まって復活を遂げたが、「100チェロ」はこの劇場に留まることなく、 最後に置かれるのはシベリウスの交響曲第3番。イギリス・プロになぜフィンランドのシベリウスなのか? イギリスでは管弦楽曲の創作の大きな波が20世紀になってやってくるが、それに先行して大きな人気を得ていたのがシベリウスだった。交響曲第3番はそんなシベリウスの転機になった作品で、世界各地へと広がった。 日本では2019年にすみだトリフォニーホールで「100チェロ」が初開催された。その際は100人どころか129人ものチェリストたちが集まって、コンサートホールの空間が異様な熱気で包まれたが、今回の堺公演にはなんと3/30(日)15:00 フェニーチェ堺問 フェニーチェ堺072-223-1000 https://www.fenice-sacay.jp全体を三楽章にまとめ編成を簡素化、一方で主題を緊密に構成するなど、それまでのロマン派風の規模感を圧縮して密度を高めている。ウォルフは自らもヴァイオリン奏者として豊富な経験を持っているだけに、精鋭揃いの神戸市室内管弦楽団からどんなサウンドを引き出すかに注目したい。160人以上が参加するという。ソッリマは猛烈なテンションで文字通り飛んだり跳ねたりしながらメンバーを鼓舞する。予定曲目にはバッハもあればピンク・フロイドもあって、まったく自由だ。かつて経験したことのない驚くべきステージが待っている。
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