eぶらあぼ 2025.3月号
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三浦文彰 ©Yuji Hori清水和音 ©Mana Miki ©ZIGENInterview3/2(日)14:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット問 横須賀芸術劇場046-823-9999https://www.yokosuka-arts.or.jpるということにも大きな意味があります。また、演奏のたびに変化があるので、常に新しい作品として取り組む感覚もあり、この曲の今後の発展も楽しみです」 距離と時間を超えて響き合うふたつの楽器の出会いは、新たな音楽の可能性を教えてくれるに違いない。クレア・チェイス & 本條秀慈郎 フルートと三味線による新しい音を求めて3/19(水)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jp55本條秀慈郎(三味線)横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ72 三浦文彰(ヴァイオリン) & 清水和音(ピアノ) デュオ・リサイタル深化した「クロイツェル」、二人の妙技が響き合う「溶け合ったり、対峙したり」――フルートと創る新たな音世界取材・文:片桐卓也文:林 昌英 安定感と刺激を併せもつヴァイオリンとピアノのデュオを、横須賀で味わう。デビューから40年余、いま60代半ばでより円熟を深めるピアニスト清水和音。30代前半にしてすでに多岐にわたる活動で成果を出し続けるヴァイオリニスト三浦文彰。30歳以上の差は関係ないどころか、むしろ自然な空気感で共演できるパートナー同士という域にある。1年前にはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会シリーズが開始され、この2月に完了する。 その直後、3月の横須賀公演のプロ 西洋楽器であるフルートと邦楽器である三味線によるデュオ公演がHakuju Hallで開催される。ニューヨーク・タイムズ紙に「現代で最も重要なフルート奏者」と評されたクレア・チェイス(インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブルのメンバーとして2014年に同ホールに登場したことも)と、藤倉大作曲の「三味線協奏曲」を世界初演し、あの坂本龍一とも度々同じ舞台に立った本條秀慈郎が、響きの豊かなHakuju Hallの空間で共演する。どんなコンサートになるのか、秀慈郎に聞いた。 「ニューヨークでふたりの出会うきっかけを作ってくれた藤倉さんの作品もあれば、クレアがこの公演のために選んでくれた彼女のソロによるフェリペ・ララの作品、ジャズピアニストでもあるヴィジェイ・アイヤーの曲や端唄(三浦寛也編)なども取り上げ、多彩なプログラムになります。作曲家の名前を一見すると、現代的な曲ばかりと思われるかもしれませんが、実際にはそれぞれの楽器の魅力を自然に発揮できる作品が多く、楽器の歴史にも想いを馳せることができそうです」 ふたりは出会った後に共演を始め、最近でもアメリカのモンタナでコンサートを行うなど、お互いの音楽性も深く学びあっていると言う。グラムは、彼らの培ったものをまとめて、さらに次のステージに入る節目のような内容。まず、モーツァルトのホ短調(第28番)。作曲者の真価を示す2楽章の名品で、あらためて古典の美を追求。次に、シューベルトのイ長調。「グラン・デュオ」とも呼ばれる意欲作にして難曲で、匠の技と歌心を聴かせる。最後はベートーヴェン、しかも「クロイツェル」。深めてきた両者のコンビネーションを、最高の傑作で力強く示す。 「クレアは非常に繊細な人で、楽譜に書かれた一つひとつの音の〈質感〉を大切にしています。三味線という楽器は〈さわり〉という言葉で表されるように、楽音になる以前の音色を大切にする楽器ですが、彼女はその特性をよく理解してくれて、自分自身のフルートの音をそこから探っていくような注意深さがあります。お互いに音を奏でながら、さらに溶け合ったり、対峙したりする時間のなかで、フルートと三味線にしか作り出せない世界を展開していきます」 今回のプログラムの中には、桑原ゆう「風の陀羅尼」(2016)のロングバージョンの世界初演や、藤倉が三味線を習い始めて最初に書いた「冷泉~アルトフルートと三味線のための」(2021)の日本初演もされる。 「『冷泉』は、Hakuju Hallとクレアの共同委嘱で、ハーバード大学音楽学部の協力を得て書かれた作品で、それを美しい響きのHakuju Hallで初演でき

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