eぶらあぼ 2025.3月号
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3番。長い指導と思考を経た、名作の清新な演奏に大いに期待したい。そしてウェールズは、ブラームス第2番で“模範演奏”を行う形になる。本作は彼らの2009年デビュー公演でも取り上げた作品で、あえてここで選んだ意味合いと共に、彼らならではのブラームスの真髄を示す。髙木竜馬 ©Yuji Uenoウェールズ弦楽四重奏団 ©Satoshi Oonoアンドレア・バッティストーニ ©三浦興一第1012回 オーチャード定期演奏会3/9(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール第168回 東京オペラシティ定期シリーズ3/12(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第1013回 サントリー定期シリーズ 3/14(金)19:00 サントリーホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp53クァルテット・ウィークエンド2024 - 2025ウェールズ弦楽四重奏団 〜ウェールズ・アカデミー ガラ・コンサートアンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団ストラヴィンスキー&ヒンデミットでマエストロの躍動を堪能“師匠”と同じ舞台でアカデミーの成果を示す文:鈴木淳史文:林 昌英 アンドレア・バッティストーニのタクトは、音楽の表情に応じ、その瞬間ごとに鮮やかな光景を映し出す。そして、客席に高揚感をもたらす瞬発力、運動性、そして色彩感。3月の東京フィル定期では、そんな彼の持ち味を生かしたプログラムが披露される。 これまで、ストラヴィンスキーの「春の祭典」(2017年)、「火の鳥」(2021年)を取り上げてきたバッティストーニと東京フィル。今回の「ペトルーシュカ」(1947年版)によって、三大バレエ演奏が完結する。民族的なエレメントをモダニズムへと昇華させた「ペトルーシュカ」。オーケストラのもつ輝かしいサウンドを存分に生かしつつ、ニュアンスに富んだ演奏を期待していい。ピアノ・パートを髙木竜馬が弾くのもうれしい限りだ。 もう一つのメインとなる作品は、今年生誕130年を迎えるヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」 日本の四重奏団体のなかでも、特別な存在感をもつウェールズ弦楽四重奏団。昨年はサントリーホールのチェンバーミュージック・ガーデン「ベートーヴェン・サイクル」を担当し、どの団体とも違う世界観を築き上げて、大きなインパクトを与えた。 その彼らが後進に様々なことを伝えたいと考え、第一生命ホールと共に開始したのが「ウェールズ・アカデミー」である。彼らが選抜した若手団体に、なんと半年以上の長期間にわたりレッスンを行う。重要なポイントを4人が多彩なアプローチで指摘し、伝え、何より考えさせる。筆者も前2回の同アカデミーのレッスンを取材して、プロはここまで緻密に作り上げるのかと畏怖すら覚えたが、アカデミー生の演奏は確実に変化し、細かい気付きを積み重ねることでむしろ「表現の自由」につながっていくことも実感でき、目から鱗が落ちる思いだった。だ。渋味をもった後期ロマン派の作曲家による数多い楽曲のなかで、もっとも演奏効果が高い人気曲でもある。過剰なまでの色彩と躍動感、そしてジャズの影響も見受けられるリズム。とりわけ第2楽章のウェーバーの劇付随音楽「トゥーランドット」の主題に基づく変奏曲や、第4楽章の行進曲では、生き生きとした表情でアツい音楽を客席まで届けてくれることだろう。この曲の前には、 最終日に“師弟”によるガラ・コンサートが行われるのも、本アカデミーの大きな特長。今回のアカデミー生は、桐朋学園大学・大学院の在学・修了生のクァルテット・リコルドと、東京藝術大学大学院在学中のクァルテット・アチェロ。彼らが奏でるのは、前者がベートーヴェン第5番、後者がシューマン第3/9(日)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.netウェーバーにちなんで、その《オベロン》序曲を演奏。オペラ指揮者としてのキャリアも順調に積み重ねてきたマエストロの腕前が発揮されよう。

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