eぶらあぼ 2025.3月号
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→C 坂本光太(テューバ)□□□□□□□オクサーナ・リーニフ ©Oleksandr Samoilovヤメン・サーディ第647回 定期演奏会 4/21(月)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp46オクサーナ・リーニフ(指揮) 読売日本交響楽団躍進を続けるマエストラがコンサート指揮者としての真価をみせる東京オペラシティ B大胆なパフォーマンスで音楽聴取のあり方を問う文:山田治生文:江藤光紀 ウクライナ出身のオクサーナ・リーニフが読売日本交響楽団の定期演奏会に登壇する。リーニフは、2021年にバイロイト音楽祭で《さまよえるオランダ人》を指揮して、同音楽祭史上初の女性指揮者となり、22年には、ボローニャ歌劇場の音楽監督に就任。一昨年のボローニャ歌劇場来日公演での《トスカ》の快演が記憶に新しい。昨年は《トゥーランドット》を振って、メトロポリタン歌劇場にデビューした。また、コンサート指揮者としては、2004年のグスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで第3位に入賞し、マーラーやブルックナーなど独墺系の音楽に熱心に取り組んでいる。 今回のバルトークの組曲「中国の不思議な役人」は多彩で複雑な管弦楽法で書かれた作品だけに、コンサート指揮者としての真価が示されることであろう。また、彼女の祖国、ウクライナの作曲家ボーダナ・フロリャク(1968年生まれ)の「光あれ」が紹介されるの 戦後の前衛音楽が行った実験の一つに、パフォーマンス概念の拡張――演奏に音楽以外の行為を組み込むことで音楽を異化する――という方向性があり、マウリツィオ・カーゲルやヴィンコ・グロボカールといった作曲家がこれを推し進めた。 テューバ奏者・坂本光太は2016年、ルツェルン・フェスティバル・アカデミーに参加した際、グロボカール作品に出会い魅了され、その分析で博士号を取得するほどのめり込んだ。また一方で、様々なジャンルのアーティストとコラボすることで、テューバのレパートリーのみならず21世紀のパフォーマンス音楽の領域を開拓している。 3月のB→Cはそんな坂本のユニークな経歴が生きた演奏会になりそうだ。まずはバッハを2曲(カンタータ第12番『泣き、歎き、憂い、怯え』BWV12からシンフォニア、ソナタ ト短調 BWV 1030b)演奏した後、テューバや自身にも楽しみだ。 そのほか、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番のソリストとして招かれるヤメン・サーディにも注目。1997年、イスラエル生まれ。現在、ウィーン国立歌劇場管弦楽団とウィーン・フィルのコンサートマスターを務ついての語りと演奏を組み合わせた久保田翠「あるチューバ/テューバについての物語」、自分の体のほくろの位置から音符を立ち上げた山﨑燈里「黒い帯」と続き、すでに共演経験もある演出家・和田ながらと坂本の共作による新作へとつなげる。 そこから演者が楽器を演奏しながら床に寝そべるカーゲルのシアター・ピース「アーテム(呼吸)」、テューバにサクソフォンのマウスピースや笛、ファゴットのリードなどを取り付けるグロボカール「エシャンジュ(交換)」といった前衛音楽の古典を演奏して閉じる。 コンサートにはピアノの杉山萌嘉、演出の和田の他に二人のパフォーマー(長洲仁美、山﨑燈里)も参加。異色のB→Cになりそうだ。3/18(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jpめる気鋭のヴァイオリニストである。今、ウクライナ出身の指揮者のもと、ウィーンで活躍するイスラエル出身のヴァイオリニストの独奏で、ロシア(ソ連)を代表するショスタコーヴィチの協奏曲が演奏されるということは、非常に意味深く思われる。

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