〜N響メンバーによる室内楽シリーズ〜N響チェンバー・ソロイスツ 第8回 シューベルトの八重奏曲腕利きの奏者たちがおくる濃密で多彩な響きアレクサンダー・リープライヒ ©Sammy Hart郷古 廉 ©Hisao Suzukiコリヤ・ブラッハー ©Felix Broede村上淳一郎伊藤 圭宇賀神広宣第769回 東京定期演奏会 4/11(金)19:00、4/12(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp43文:柴田克彦アレクサンダー・リープライヒ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団時を超えた対話――コリヤ・ブラッハーが弾く偉大なる父のコンチェルト文:山田治生 日本フィルハーモニー交響楽団と抜群の相性をみせ、2019年3月・12月、24年3月と共演を重ねているドイツ出身のアレクサンダー・リープライヒが、4月の東京定期演奏会に登場し、ドイツ音楽を中心としたプログラムを指揮する。 一番の注目は、ヴァイオリンのコリヤ・ブラッハーが弾く、彼の父ボリス・ブラッハーの協奏曲だろう。1963年、ベルリン生まれのコリヤ・ブラッハーは、1993年から99年までベルリン・フィルのコンサートマスターを務めた後、ソリストとして活躍。アバドからの信頼が厚く、彼が音楽監督だったルツェルン祝祭管弦楽団でもコンマスを務めた。ボリス・ブラッハーは20世紀ドイツを代表する作曲家の一人であり、今回演奏されるヴァイオリン協奏曲は1948年に書き上げられた20分弱の作品である。モダンで新古典的なところもあり、比較的聴きやすい。既にCD録音もしているコリヤが日本でも同曲を披露し 2021年からHakuju Hallで開催されている「N響チェンバー・ソロイスツ」は実に面白い。これまで、「マーラー 交響曲第10番 室内オーケストラ版」日本初演や「木管2番奏者による特殊管の世界」等々、興味深いプログラムの連続。オーケストラとは異なる室内楽の醍醐味を、ひと捻りした内容で満喫させてきた。そして3月に行われる第8回は「シューベルトの八重奏曲」。弦楽器+管楽器の室内楽曲を代表する名作が、郷古廉(ヴァイオリン)、村上淳一郎(ヴィオラ)、伊藤圭(クラリネット)、宇賀神広宣(ファゴット)といったコンサートマスターや首席奏者をはじめとする名手たちによって披露される。曲は全6楽章・約1時間の大作だが、メロディアスで生き生きとした音楽は無尽蔵の魅力に溢れており、日本トップ級の濃密な演奏にただ身を浸すだけで魅せられること間違いなし。しかも、ソロイスティックな技量と音色やフレーてくれるのが楽しみである。 コンチェルトの前には、ハイドンの交響曲第79番が取り上げられる。1779年にエステルハージ侯爵の許可がなくても外部からの作品委嘱を正式に受けられるようになり、国際的な評価を高めつつあった1784年頃の作品であジングの同質性が共に求められるこの曲は、N響のメンバーにまさしくピッタリだ。 加えて前半には、18世紀フランスのチェロ奏者バリエールの2つのチェロのソナタ第4番のチェロ&コントラバス版、ベートーヴェンのクラリネットとファゴットの二重奏曲第1番、ドヴォル3/14(金)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jpる。そして、演奏会後半には、アイヴズの「答えのない質問」とR.シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」が並べられる。ともに哲学的なテーマを扱った作品であり、近現代作品を得意とするリープライヒの解釈が興味津々である。ザークの2本のヴァイオリンとヴィオラの三重奏曲が並んでいる。これらのレア曲を生で聴けるのは貴重だし、楽器や奏者の音色や特徴を知った上で後半のシューベルトに臨むことができるのも嬉しいところ。ここは、N響の気鋭から中堅メンバーの妙技を、響きの良いHakuju Hallで存分に堪能したい。
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