eぶらあぼ 2025.3月号
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それでも踊るそれでも踊る者たちのために者たちのために第125回 「あえて世代で語る日本ダンスの半世紀」 世代論は好きではない。しかしほぼ半世紀が経過する日本のコンテンポラリー・ダンス史を系統的に学ぶ機会の少なさを鑑み、あえて語ってみたい。同時代の状況によって何かが見えてくるかもしれない。●コンテンポラリー・ダンス前史(~1980年代) 戦前から続くクラシック・バレエ、モダン・ダンス、さらにローラン・プティやモーリス・ベジャールなどモダン・バレエ、そして1960年代に誕生し1980年に世界的に大ブレイクしていた舞踏(暗黒舞踏)が「次のダンス」の揺籃となった。●ゼロ世代(1980年代~) バブル経済の恩恵で、世界中から最新のダンスが大量に招聘された。オレは1986年を日本のコンテンポラリー・ダンス元年としているが、それはこの年に勅使川原三郎が振付家の登竜門だったフランスのバニョレ国際舞踊振付コンクールで受賞、ピナ・バウシュの初来日、土方巽の死去があり、新しい時代の風が吹いたからである。黒沢美香、加藤みや子、ダムタイプ、山崎広太など。●第1世代(1990年代~) 海外からの「新しいダンスの直撃」を受け、強烈な個性を持った若手の振付家を求心力として個性的なカンパニーが多数誕生。横浜ダンスコレクション(1996年~)も後押しとなった。 近藤良平(コンドルズ)、大島早紀子+白河直子(H・アール・カオス)、伊藤キム(輝く未来)、北村明子(レニ・バッソ)、伊藤千枝(珍しいキノコ舞踊団)、井手茂太(イデビアン・クルー)など。●第2世代(2000年頃~) バブル崩壊後は、海外招聘よりも国内の若手育成に注力。トヨタ コレオグラフィーアワード(2001年~17年)。日本初の公立劇場専属舞踊団・Noism設立(2004年)。演劇的アプローチも増える。 黒田育世(BATIK)、矢内原美邦(ニブロール)、小野寺修二(カンパニーデラシネラ)、森山開次、山118田うん(Co.山田うん)、金森穣(Noism)、鈴木ユキオ(金魚)、東野祥子(BABY-Q)、梅田宏明(S20)など。●第3世代(2010年頃~) 東日本大震災と原発事故(2011年)を経験。コンセプト以上に、よりたしかな身体性を希求する傾向あり。不況が続きカンパニー維持が難しく、ソロやプロダクション単位の活動も増える。大学の授業を契機にダンスを始める者も。同年代の仲は良いが、上の世代とのつながりが希薄。 KENTARO!!(東京ELECTROCK STAIRS)、三東瑠璃(Co.Ruri Mito)、関かおり(PUNCTUMUN)、康本雅子、平原慎太郎(OrganWorks)、川村美紀子、小暮香帆、北尾亘(Baobab)、中村蓉、黒須育海(ブッシュマン)など。●第4世代(2015年頃~)  第3世代と重なるが、従来のダンスから逸脱し、新しい表現の可能性を探っていく一群。 森山未來、倉田翠(akakilike)、ハラサオリ、下島礼紗(ケダゴロ)、田村興一郞(DANCE PJ REVO)、Aokid、スズキ拓朗(CHAiroiPLIN)、渡邉尚(頭と口)、宮悠介、髙橋春香、浅川奏瑛など。 ……まああまり「世代」でもないし、そもそもこれが乱暴な行為であることは自覚している。名を挙げたのはごく一部にすぎず、いずれも当時の名称だ。しかしダンスの脈動が確実に「次」へつながっていることは伝わるだろう。Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。「ダンス私塾オンライン」開設。皆様の参加をお待ちしております!乗越たかお

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