eぶらあぼ 2025.3月号
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CDSACDCDCD114モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第25番・第34番・第40番/庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリファンタジー/北村明日人華開世界―西村朗 管弦楽作品集モーツァルト&ベートーヴェン:ピアノ協奏曲集 ウィズ・ジャズ・インプロヴァイジング/小曽根真庄司紗矢香とジャンルカ・カシオーリによるモーツァルトの二重奏ソナタ集、ドイツ・グラモフォンからアルカナに舞台を移しての第2弾。庄司のクラシカル弓とガット弦の使用、カシオーリのフォルテピアノの使用が話題となったVOL.1と来日公演は賛否もあったが、筆者は新たな挑戦を強く支持したい。本盤はK.301以降の3曲。前作よりもさらに楽器と語法を手の内に入れた演奏が展開される。反復時に即興的装飾を敢行するカシオーリ、そしてモダン楽器での経験値をピリオド楽器演奏と融合させる庄司。2人は自在なテンポの加減速を駆使し、スリリングな対話を繰り広げる。新たな視界が確かに開けている。(矢澤孝樹)北村明日人は、国内外での数々のコンクール優勝および上位入賞歴をもつ、いまもっとも注目を集めるピアニストのひとり。ドイツ音楽をレパートリーの中心に据え、卓越した技術とスケールの大きな音楽づくり、そして楽曲を深く理解する洞察力によって聴衆を魅了してきた。本盤では彼が得意とするベートーヴェンをはじめ、同時代に活躍した作曲家たちによる「幻想曲」を収録。深い響きをたたえた美音、緻密な構築はもちろん、即興性まで聴かせてくれる、いまの北村の練り上げられた音楽性を存分にアピールする内容となっている。   (長井進之介)2023年9月に亡くなった西村朗の最晩年の作品群。「華開世界」は冒頭からメタリックな鍵盤打楽器が絢爛とした音響空間を出現させる。激しく顫動するオーケストラが生み出す音の渦は、まばゆい光となって聴き手を包み込む。三重協奏曲「胡蝶夢」ではハープが紡ぐ妖しいハーモニーを背景に、ヴァイオリンとクラリネットが悲しくはかない歌を歌う。それは次第にセンチメンタルな色合いを帯びてゆく。遺作「神秘的合一」はピアノとオーケストラが奏でる地獄の行進曲。断ち切るような一撃の後、蝋燭の火を吹き消すように管楽器の息が入る。命が涸れるその寸前まで燃焼し続けた創造の記録だ。(江藤光紀)小曽根真のアルバムがポーランド国立ショパン研究所のレーベルから登場! 2006年と07年開催の「ショパンと彼のヨーロッパ」国際音楽祭での協奏曲ライブ録音だ。モーツァルトの第9番「ジュノム」とベートーヴェンの第2番で、古典派音楽の颯爽とした生命力を丁寧に描く。小曽根の即興がカデンツァやそれ以外の箇所でも展開するが、これ見よがしな「ジャズ語法」ではなく、あくまで作品世界へのリスペクトに溢れた都会的センスで聴かせる。後者の終楽章の即興は宇宙的な爆発力で、まさにベートーヴェンのスピリットを伝える小曽根の至芸に舌を巻く。 (飯田有抄)庄司紗矢香(ヴァイオリン)ジャンルカ・カシオーリ(フォルテピアノ)Arcana/ナクソス・ジャパンNYCX-10507 ¥3300(税込)北村明日人(ピアノ)小曽根真(ピアノ)アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキー 尾高忠明(以上指揮)シンフォニア・ヴァルソヴィアモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第25番、同第34番、同第40番ハイドン:幻想曲/ベートーヴェン:幻想曲、ピアノ・ソナタ第13番「幻想風ソナタ」/リース:歌劇《フィガロの結婚》の主題による2つの幻想曲より第2番/デュセック:幻想曲とフーガオクタヴィア・レコードOVCT-00213 ¥3850(税込)西村朗:華開世界、三重協奏曲「胡蝶夢」、ピアノとオーケストラのための「神秘的合一」NHK交響楽団 いずみシンフォニエッタ大阪 パシフィックフィルハーモニア東京 杉山洋一 飯森範親(以上指揮) 小栗まち絵(ヴァイオリン) 篠﨑和子(ハープ) 上田希(クラリネット) 小菅優(ピアノ)収録:2021年6月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ) 他カメラータ・トウキョウCMCD-28393 ¥3080(税込)モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 他収録:2006年8月&2007年8月、ワルシャワ(ライブ)NIFC/東京エムプラスXNIFCCD 159 ¥3300(税込)

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