eぶらあぼ 2025.3月号
115/137

SACDCDCDCD112リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」/井上道義&新日本フィルソル:二人の友/福田進一&エドゥアルド・フェルナンデスパガニーニ:24のカプリース 他/マリア・ドゥエニャスフランスいにしえの吐息/藍原ゆき&渡邊温子昨年末に引退した井上道義。彼と長年にわたって深い関係を築いてきた新日本フィルを指揮し、2021年にライブ録音した「シェエラザード」だ。決して大風呂敷を広げるようなことはなく、抑制もぴりっと効いた、整えられたバランスによる演奏からは、ほのかな色彩性が香り立つ。コンサートマスターの崔文洙によるソロは、その場面に応じてさまざまに表情を変化させていく。白眉は第3楽章だ。艶やかな抒情を湛えつつも、しみじみと歌う弦楽器。オーボエなどの木管ソロにも、フレーズのすみずみまで歌心が行き渡る。後半でシェエラザードの主題が戻ってくるところは官能が渦巻く。(鈴木淳史)ウルグアイ生まれの名手と、日本が誇る妙手。1995年、東京文化会館でのリサイタル以来、断続的ではあるが世界各地で一緒に演奏活動を行っている名コンビによる、2024年録音の最新デュオ・アルバム。まるでこの二人のために書かれたようなフェルナンド・ソル(1778~1839)の、多彩な変奏と華麗なマズルカからなる難曲で幕開け。現代音楽の語法を使いつつも嬉遊曲のような洒脱さも感じられるグイド・サントルソラ(1904~94)のデュオ・ソナタも聴きどころ。それらを軸に、それぞれが編曲したバロック4作品が散りばめられ、ヒナステラとピアソラで締める流れが絶妙だ。(東端哲也)「24のカプリース」で約100分! 約60分の小品集も加わり、CD限界の収録時間で、まだ20代前半のドゥエニャスが、すでに恐るべきアーティストであることが強烈に示される。カプリースは衝撃。彼女には「超絶技巧」という言葉も過去のもの。テクニックは余裕で完璧、もはやフレーズごとに違う奏法と音色を繰り出し、とにかく“歌う”。実際に歌声のように抑揚は豊かで劇的、緩急・硬軟・攻守、すべて自在。結果として演奏時間はかかるが、1秒たりとも飽きさせない。“音楽的”どころか“音楽のみ”のカプリースがあり得るとは。只管圧巻。ヴァイオリン演奏史に残る盤になるのでは。(林 昌英)フランス・バロックの二巨匠、マラン・マレとフランソワ・クープランのヴィオル音楽を組み合わせ、後者のクラヴサン曲を挿入。幻想的なマレに対し、雅な見かけに詩情を託したクープランと作風は対照的で、両者を組み合わせたアルバムは意外に少ない。本盤は2枚組で各盤に両者を振り分けている。しかし演奏は対比を強調するよりも、奏者のキャラクターで共通する要素を探り出す印象だ。キーワードは「情念」だろう。細部の微細な配慮や安定性よりも太い描線で貫く。倍音渦巻くマレからは鬼気が立ち上り、クープランは苦し気な高音部が吐息というよりほとんど呻き声のよう。異色の演奏だ。(矢澤孝樹)井上道義(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団崔文洙(ソロ・ヴァイオリン)マリア・ドゥエニャス(ヴァイオリン)ミハイル・ゲルツ(指揮)ベルリン・ドイツ交響楽団 他藍原ゆき(ヴィオラ・ダ・ガンバ)渡邊温子(チェンバロ)FiammettaFMOE-003(2枚組) ¥3000(税込)リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」収録:2021年4月、すみだトリフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00800 ¥3850(税込)ソル:幻想曲「二人の友」/スカルラッティ(E.フェルナンデス編):ソナタ K.213/J.S.バッハ(福田進一編):協奏曲 ニ短調/サントルソラ:ソナタ・ア・デュオ第1番/ヒナステラ(C.バルボサ=リマ編):「5つのアルゼンチン民謡」より〈サンバとガト〉/ピアソラ(D.エストラダ編):来るべきもの 他福田進一 エドゥアルド・フェルナンデス(以上ギター)マイスター・ミュージックMM-4538 ¥3520(税込)パガニーニ:24のカプリース/サラサーテ:バスク奇想曲/ガブリエラ・オルティス:De cuerda y madera(縄と木)/ベルリオーズ:夢とカプリッチョ/サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ 他ユニバーサル ミュージックUCCG-45112/3(2枚組) ¥4070(税込)マレ:1台もしくは2台のヴィオルのための曲集、ヴィオルと通奏低音のための曲集 第2巻/クープラン:クラヴサン曲集第4巻より第27オルドル、ヴィオルと通奏低音のための曲集第2巻

元のページ  ../index.html#115

このブックを見る