ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」/秋山和慶&東響 モニュメント・トゥ・ベートーヴェン/ニコライ・ホジャイノフふたつのグラン・パルティータ/インターナショナル・ウィンド・サミットSACDCDCDCD108Credo/寺井創秋山和慶指揮者生活60周年記念公演。ブックレットは功績を振り返り、さらなる大成を確信する内容。演奏もまさに円熟の境地。豊潤かつ芳醇なブルックナー。しなやかで温もりある音色。神々しくも雄渾な全奏。思わせぶりな身振りは皆無。力みがなく、どこまでも自然体。偉大な節目であっても、これからも続く活動の通過点に過ぎないと言わんばかりに。そして当盤を聴くタイミングに飛び込んだ、秋山和慶急逝の報。追悼盤となってしまった記念盤。秋山の「通過点」のはるかな高みを示す、一点の曇りなき晴朗な響きに包まれ、もう二度と見られない、あの美しい指揮姿を脳裏に浮かべる。(林 昌英)4歳からチェロを始めた寺井が40年目という節目に出した中間報告。「信仰告白」というタイトル通り、音楽に誠実に向かい合う姿が演奏のみならず選曲、そして一曲ごとに丁寧にしたためられた解説からも伝わってくる。「マズルカ」(ポッパー)や「トッカータ」(フレスコバルディ)など一部に速い曲もあるが、主にゆったりと歌う小品で構成される。そっと寄り添うようなピアノに支えられて、粘り強く高まる旋律の流れが聴き手のエモーションを揺さぶり、そして落ち着かせる。この密やかな精神の旅は、最後に祈りのごとき趣を帯びた「コル・ニドライ」(ブルッフ)で安寧の境地にたどり着く。(江藤光紀)ホジャイノフが「ベートーヴェンへの記念碑」と題するコンセプト・アルバムを出した。ベートーヴェンの第7交響曲第2楽章をリスト編曲で示し、この主題から霊感を得たシューマンとメンデルスゾーンの変奏曲を取り上げる。シューマンの変奏形式の練習曲は、珍しく貴重だ。自筆譜の変奏には「田園」を思わせるものもある。「厳格な変奏曲」では、自らの技巧の切れ味を余す所なく見せつける。また連作歌曲集「遥かな恋人へ寄せて」(リスト編)とその引用のあるシューマンの幻想曲を組み合わせる。後者の大作では、旋律と内声の葛藤、エネルギーの爆発、内面への沈潜が、実に豊かに表現される。(横原千史)ホルン奏者の福川伸陽がプロデュースを務め、2024年11月に開催された管楽器の名手たちの集い「インターナショナル・ウィンド・サミット」の熱気を伝えるアルバムが早くも登場。ライブ及び翌日のセッションによる録音。十人十色のスタイルを持つ世界のスター奏者と日本トップレベルの才能が互いにスパークしつつ混じり合い、まず奏でたるはモーツァルトのセレナード第10番「グラン・パルティータ」。これに福川とも親交が深く、国際的な注目を浴びる藤倉大が同じ編成で作曲した、ホルンが大活躍する世界初演の新作が続く圧巻のプログラムだ。 (東端哲也)秋山和慶(指揮)東京交響楽団 ニコライ・ホジャイノフ(ピアノ)Rondeau/東京エムプラスXROP 6274 ¥3300(税込)インターナショナル・ウィンド・サミット【福川伸陽(ホルン) フィリップ・トーンドゥル(オーボエ) ニコラ・バルディルー(クラリネット) 小山莉絵(ファゴット) 他】ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(1878/80年稿 ノヴァーク版)収録:2024年9月、サントリーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00866 ¥3850(税込)サン=サーンス:白鳥/メンデルスゾーン:無言歌 op.19-1「甘い思い出」/ポッパー:マズルカ ト短調/フレスコバルディ:トッカータ/J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番より「ブーレ」/カザルス:鳥の歌/ブルッフ:コル・ニドライ 他寺井創(チェロ)鈴木慎崇(ピアノ)コジマ録音ALM-7305 ¥3300(税込)ベートーヴェン(リスト編):交響曲第7番より第2楽章、連作歌曲集「遥かな恋人へ寄せて」より〈受け取ってください、この歌を〉/シューマン:ベートーヴェンの主題による自由な変奏形式の練習曲、幻想曲/メンデルスゾーン:厳格な変奏曲/ニコライ・ホジャイノフ:平和の花びらモーツァルト:セレナード第10番「グラン・パルティータ」/藤倉大:グラン・パルティータ収録:2024年11月、紀尾井ホール(ライブ) 他キングレコードKICC 1624 ¥3300(税込)
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