eぶらあぼ 2025.2月号
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第21回 子どもたちと芸術家の出あう街 2025 にじいろコンサート東京フィルが子どもたちの感性を育む©Tomoko Hidaki齋藤友香理中村滉己66C × Baroque シー・バイ・バロック 大塚直哉が誘うバロックの世界 Vol.4バッハからの"招待状" or "挑戦状"!? 〜出版された「クラヴィーア練習曲」シリーズより〜文:朝岡 聡鍵盤音楽の高みへ――創意に満ちた作品群を一堂に集めて文:宮本 明 芸術との出会いが子どもたちの感性と創造力を刺激する「子どもたちと芸術家の出あう街」(主催:東京都ほか)が今年も。出演は齋藤友香理指揮の東京フィル。今回のテーマは「にじいろコンサート」で、《カルメン》《くるみ割り人形》《アイーダ》のおなじみのメロディから、外山雄三「八木節」(管弦楽のためのラプソディ)まで、バラエティに富んだ世界の音楽が地球を美しい虹の橋で結ぶ。オーケストラの豊かな響きが彩る名曲の中に、子どもたちは自分に合った“色”を見つけるはず。 注目のひとつが津軽三味線奏者・民謡歌手の若き名手・中村滉己(こうき)の登場。近年ではプロ転向したスケーター・羽生結弦とのコラボでも脚光を浴びた、2003年生まれの21歳。民謡一家に生まれ、その伝統を継承しつつ、クラシック音楽やダンス・ミュージックなどジャンルを超えた音楽との融合で、古典音楽の可能性、新たな魅力を チェンバロ&オルガン奏者の大塚直哉がバロック音楽の世界を案内するシリーズの4回目。今回はバッハのクラヴィーア練習曲集第1~3巻を2日間に分けてとりあげる。バッハ自らの意思で作曲・出版したこれらの曲集は、「自分の豊かな音楽への招待状」であると同時に「我が至高の音楽を理解できるのか?という挑戦状」でもある…というユニークな視点でその魅力を紹介してくれる。 大塚は毎回、ナビゲーターを務めるNHK-FM番組での柔らかい語り口そのままに、説得力ある演奏と興味深いトークを展開するから、このコンサートは「へぇ~」「なるほど!」「そうだったのか…」の連続で愉しいことこの上ない。この度は初日がチェンバロのための作品を集めた第1巻「6つのパルティータ」と第2巻「イタリア協奏曲」・「フランス風序曲」、2日目は神奈川県民ホールのオルガン・アドバイザー中田恵子を切り拓く。今回はオーケストラとの共演で、裏声が印象的な津軽民謡〈ホーハイ節〉と、協奏風のハチャトゥリアン〈剣の舞〉を披露。たしかに、〈剣の舞〉の例のあのメロディの木琴は、ばちを叩きつけるように弾く津軽三味線のイメージと重なるかも。司会にミュージ2/11(火・祝)15:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jpゲストに迎え、第3巻「ドイツ・オルガン・ミサ」からの楽曲を披露する予定。 初日は休憩2回でたっぷり演奏が楽しめるし、2日目は大塚がポジティフオルガンを、中田が小ホールのオルガンを奏でてくれる。あの空間で響く「ドイツ・オルガン・ミサ」からのプログラムはとても貴重。豊かな音色に包まれることだろう。 「ドイツ・オルガン・ミサ」に代表されるバッハの重厚なる鍵盤音楽の宇宙は、時に難解でとっつきにくい印象を与えがちだが、この公演を訪れれば心配ご無用。これまで、しかめっ面だった3/22(土)、3/23(日)各日14:00 神奈川県民ホール(小)問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-kenminhall.com※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。カル女優の中村萌子。 なお、今年は会場がいつもと異なるので、“常連さん”は要注意。迷わず東京オペラシティへ! 会場周辺では例年どおり、開演前の無料コンサートも開催予定。時間に余裕をもって出かけるのがお得。バッハが、にっこり微笑んでくれるに違いない。

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