eぶらあぼ 2025.2月号
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カーチュン・ウォン ©Ayane Sato中島英寿 ©加納典明吉田珠代清水華澄 ©Mariko Tagashira岡田 奏 ©Makoto Kamiya57文:江藤光紀文:片桐卓也 カーチュン・ウォンにとって、キャリアの初めからマーラーは最も重要な作曲家の一人だった。ドイツで学んだカーチュンは、2016年、グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝し国際的な脚光を浴びた。これはマーラーの孫娘がバンベルク響と創設したもので、この作曲家の作品が審査に大きな比重を占める。カーチュンの解釈はいわば本家公認の、オーセンティックなものなのだ。 日本フィルでも首席客演指揮者就任のお披露目公演となった2021年12月の定期での第5番を嚆矢として、22年5月には第4番を指揮。その後、23年10月の首席指揮者に就任して最初の定期では大作・第3番に挑み、さらに昨年5月には第9番と歩みを進めてきた。 日本フィルも創立指揮者・渡邉曉雄の時代からマーラー演奏の伝統を持つオケだが、緻密な読みに基づきながらもフレッシュなカーチュンの演奏は回を重ねるごとに大きな反響を呼んでいる。 これまでの東京文化会館、東京芸術劇場、トリトン・アーツ・ネットワーク(第一生命ホール)、サントリーホールに加え、新たに静岡音楽館AOIを加えた5館の連携による「若手アーティスト支援 アフタヌーン・コンサート」が開催される。日頃から都内の各施設がそれぞれの形で若手演奏家の支援に取り組んでいるが、それを踏まえて、東京文化会館は「東京ネットワーク計画」として協力を進めてきた。そこに静岡音楽館AOIが加わることで、さらなる広がりが生まれる。 今回の「アフタヌーン・コンサート」に出演する演奏家は、ピアノ・ソロがふたり、木管アンサンブル、そして弦楽四重奏団が二団体。第20回東京音楽コンクール第1位の中島英寿(ピアノ)がショパン「舟歌」「スケルツォ第2番」を、静岡市出身の伊澤拓未(ピアノ)がラフマニノフ、リストを披露。芸劇オーケストラ・アカデミー・フォー・ウインド在籍中の木管楽器奏者4人と岡田奏(ピア 大注目のシリーズは今回、第2番「復活」で折り返す。葬送行進曲風に始まり、舞曲風、スケルツォ風の楽章へと続き、第4楽章では独唱が神の存在をほのめかす。巨大な終楽章では最後の審判が下された後、二人のソリストと合唱が死者の復活と神の栄光を壮大に歌い上げる。ノ)のアンサンブルがカプレの五重奏曲第1・4楽章を、さらにクァルテット・アベリア(トリトン・アーツ・アウトリーチセミナー 2023修了生)がメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番より第1・2楽章、サントリーホール室内楽アカデミー2/15(土)15:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp ソプラノに吉田珠代、メゾソプラノに清水華澄というマーラー経験も豊富な百戦錬磨のベテラン勢を配し、合唱には日本フィルとの共演歴も長い上に近年評価を高めている東京音楽大学の合唱団が参加。自身の十八番である作曲家の初期の大作で、カーチュンがどんな起伏を持ったドラマを作り上げるのか。第8期在籍中のカルテット・ルーチェがベートーヴェンの弦楽四重奏曲第10番より第1・3・4楽章を演奏する。それぞれの研鑽の成果だけでなく、バリエーション豊かなクラシック音楽を味わえる機会でもあるので注目したい。第768回 東京定期演奏会 3/7(金)19:00、3/8(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp東京ネットワーク計画 5館連携 若手アーティスト支援 アフタヌーン・コンサート未来に羽ばたく演奏家たちの「いま」を知るチャンスカーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団マーラー屈指の人気作で織りなす一大スペクタクル

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