左より:西野ゆか、北見春菜、大友 肇、吉田有紀子51取材・文:小室敬幸文:大津 聡 2024/25シーズンに結成30年を迎えたクァルテット・エクセルシオ。もはや常設の弦楽四重奏団としてこのジャンルをリードする「老舗」に数えても差し支えあるまい。国内外で数多くの受賞歴を持ちながら、2016年には弦楽四重奏曲の金字塔とでも称すべきベートーヴェンの全曲演奏、21年には全曲録音を日本人による弦楽四重奏団では初めて成し遂げている。 そんな彼らのアニバーサリーイヤーの最後を飾るのは、モーツァルトの「ハイドン・セット」弦楽四重奏曲。彼らの現在地を見極めるのに、この6曲ほど魅 横浜みなとみらいホールの「Just Composed in Yokohama —現代作曲家シリーズ―」は、新作委嘱を軸に、同時代音楽を未来へと継承することを謳うプロジェクト。シリーズで生まれた過去の委嘱作品を再び取り上げているのが非常にユニーク。2025年の新たな委嘱作曲家と再演作を選んだのが、ホルンの福川伸陽だ。公演のテーマは“メメント・モリ(死を忘れるな)”。 「若い頃から“死”や、様々な文化の“死生観”について考えを巡らすことが多かったんです。現代音楽が好きで、作品を委嘱しているのは、『僕がいたからこの作品が出来たということならば、生きていた意味があると思えるから』でもあります。だから自分にとって原点回帰となる、非常に大事な公演です」 プログラムの最後には福川が愛してやまないR.シュトラウスの「四つの最後の歌」が据えられた。 「同時代のマーラーと比べても、R.シュトラウスって死について考え続けてきた作曲家ではないと思います。でもそんな彼でさえ死が近づくとああいう風に変わってしまった。それを皆さんがどう受け取ってくださるのかに興味があります」 この曲を福川はこれまでホルン、ソプラノ、ピアノで演奏してきたが、今回ヴィオラを加えることに(山本哲也力的な曲集もあるまい。ハイドンの「全く違う特別な方法で」書かれた「ロシア四重奏曲」に刺激を受け、「長く辛い労苦」の末に同曲集を生み出したモーツァルト。ハイドンの影響のみならず、「バッハ・ヘンデル体験」で接した対位法音楽、そして何よりモーツァルトの個人様式。同演奏会は、すべてを集中的に体験できる数少ない機会となろう。編)。共演するのはソプラノの小林沙羅、ピアノの務川慧悟、ヴィオラの中恵菜。この珍しい編成では他に、過去の委嘱作からの再演となる西村朗作品(代表作「2台のピアノと管弦楽のためのヘテロフォニー」直前の足跡を辿れる貴重な楽曲、神山奈々編)と、坂田直樹に委嘱した新作が演奏される。 「西村先生への追悼の気持ちもありますが、この『雅歌II』という作品がテーマに合致していたのですぐに決まりました。そして色彩感のある音楽を書ける坂田さんがどんな音を生み出してくれるか、私自身も楽しみです」 坂田は「現代の医療技術」をコンセプトに「臓器移植や体外受精など、生の拡張にまつわる問題」を意識して作曲中とSNSに投稿している。他にはピアノとのデュオで、プーランク「エレジー」(英国の名ホルン奏者デニス・ブレインへの追悼で、12音技法を意識した作品)とキルヒナー「三つの詩曲」、ホルン独奏でメシアン「恒星の呼び声」(若くして亡くなった教え子への追悼曲)が演奏される。 「ブレインは自動車事故で亡くなったのですが、曲中には鈍いブレーキ音のように聴こえる部分があります。キルヒナー作品は有名なオルフェオとエウリディーチェ(日本でいえばイザナギとイザナミ)伝説を題材にしています。馴染みがない曲ばかりかもしれませんが、だからこそ、聴いてくださる皆さまの個性やその時の感情が出やすいのが面白いんです! 予備知識があろうがなかろうが受け取り方が全然違う。とても自由な感想をうかがうのが楽しいからこそ現代音楽を演奏したいんです」Just Composed 2025 in Yokohama ̶現代作曲家シリーズ― メメント・モリ3/8(土)15:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000https://yokohama-minatomiraihall.jp【第1回】1/31(金)19:00 【第2回】2/20(木)19:00 J:COM浦安音楽ホール コンサートホール問 ミリオンコンサート協会03-3501-5638 https://quartet-excelsior.wixsite.comクァルテット・エクセルシオ モーツァルト「ハイドン・セット」CD発売記念コンサート調和と洗練、名手たちが贈る特別な二夜福川伸陽(ホルン)生と死のはざまに耳を澄ましてInterview
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