三浦文彰 ©Yuji Hori下野竜也 ©Nanako Ito宮本益光50モーツァルト・シンガーズ・ジャパン Vol.6《ツァイーデ/騙された花婿/カイロの鵞鳥》「未完三部作」(字幕付き)文:江藤光紀文:室田尚子 N響2月定期のCプログラムは下野竜也が登場、極上のオペレッタの世界を堪能してもらう。 オペレッタは19世紀半ばに芸術の都パリで発展し、その後ウィーンでも盛んになったジャンル。コンサートはまずウィンナ・オペレッタの父と呼ばれるフランツ・フォン・スッペの「軽騎兵」序曲で始まる。金管の荘重なファンファーレはテレビなどで誰しも耳にしたことがあるのではないだろうか。スッペからはもう一つ、劇付随音楽「詩人と農夫」序曲。序奏でチェロが「線路は続くよどこまでも」に似た旋律を歌う。スッペは軽快なだけでなく、オーケストレーションががっちりしていてパンチの効いたサウンドが楽しめる。 メインにくるのはバレエ音楽「パリの喜び」。これはパリのオペレッタ界で寵児になったジャック・オッフェンバックの名作の数々から人口に膾炙した旋律を選り抜き、マニュエル・ロザンタールが1938年に編んだもの。ワルツ、マ 日本を代表する“モーツァルト歌い”たちとコレペティートル(ピアニスト)が集まって2018年に結成されたモーツァルト・シンガーズ・ジャパン(MSJ)。これまで、モーツァルトのオペラ全作品の録音に取り組むのと並行して、セミステージ形式でのホール公演も続けてきた。特に王子ホールの「ピアノ伴奏で楽しむモーツァルトオペラ・プロジェクト」では《コジ・ファン・トゥッテ》《フィガロの結婚》《ドン・ジョヴァンニ》《魔笛》《バスティアンとバスティエンヌ》の5作を上演している。第6弾となる2月23日の公演は「未完三部作」と題し、《ツァイーデ》《騙された花婿》《カイロの鵞鳥》を取り上げる。 三作は《ツァイーデ》が1780年、《騙された花婿》《カイロの鵞鳥》が1783年に手がけられており、モーツァルトがダ・ポンテとの共同作業を開始する《フィガロの結婚》の3~6年ほど前の時期ということになる。未完のためにズルカ、ポルカといった舞曲や「天国と地獄」のにぎやかなフレンチカンカンをドラマティックにつなぎ、「ホフマンの舟歌」でしっとりと閉じる。聴きどころが数珠繋ぎになっている。 人気ヴァイオリニスト三浦文彰が登場して、オッフェンバックと同時代に活特に日本ではほとんど顧みられることのなかったこの三作をまとめて演奏する、というのは、宮本益光をはじめとするメンバー全員がモーツァルトへの情熱と深い理解を持つMSJならではといえるだろう。ちなみに《ツァイーデ》のCDは昨年5月にリリース済み。そして公演に合わせて2月19日には、《騙された花婿》《カイロの鵞鳥》のキハラ良尚によるピアノリダクション特別版のリリースも予定されている。これはぜひCDを買って予習をした上で公演に臨みたいところだ。今回も売り切れ必至のMSJ公演。絶対に見逃せない。2/23(日・祝)14:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp躍したサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番を演奏するのにも注目だ。こちらはシリアスでロマンティックな音楽で、当時のパリの音楽界の多様性も実感できるだろう。本作は三浦が下野との初共演で取り上げた曲で、磨きのかかった演奏が期待できる。第2033回 定期公演 Cプログラム2/21(金)19:00、2/22(土)14:00 NHKホール問 N響ガイド0570-02-9502 https://www.nhkso.or.jp下野竜也(指揮) NHK交響楽団パリからウィーンへ 〜オペレッタ黄金時代ヒット曲メドレー知られざる作品にモーツァルト愛を注ぐ
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